第195話 労働時間短縮だけの生産性向上では賃金は上がらない
2024-02-13
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今、日本では「生産性向上」が叫ばれています。その理由は、社員の賃金を上げるためです。
賃金を上げるためには賃金原資を増やす必要があります。そのため、生産性を向上させれば賃金原資を増やせると考え、多くの企業では「ノー残業デー」などといった労働時間を短縮する取り組みを行っています。
しかし実際に生産性の計算をしてみると、この労働時間を短縮する取り組みだけでは問題があることが分かります。
時間当たりの生産性は「成果(売り上げや粗利益)/総労働時間」で計算します。分母である「総労働時間」を短くすればいいわけではありません。同時に分子である「成果」も高めていかなければならないのです。
例えば、社員が残業を1日2時間しているという会社では、10人社員がいれば会社全体で20時間残業していることになります。このとき100の成果を上げていたとして、もし残業せずに同じ100の成果を上げることができたら、それは大いなる生産性向上といえるでしょう。
しかし成果は100のまま何ら変わっていないため、生産性は上がっていても賃金原資は増えていません。残業代は25%割増賃金のため、残業時間が短くなれば人件費の削減にはつながるかもしれませんが、賃金原資は1円も増えていません。
このように、労働時間の短縮だけでは社員の賃金は上がらないのです。このことが分かっていれば、単純に社員の労働時間を短縮すれば賃上げができるとは思わないでしょう。
大事なことは、この成果を100から120、140と上げていき、賃金原資を増やしていかなければならないことです。そのためには何をすべきか、労働時間の短縮と共に考える必要があります。
現在やっている同じことを継続するだけでは、今以上に成果が上がることはありません。本格的に成果を上げる取り組みをしていかなければ、賃金を上げ続けることは無理でしょう。
成果を上げるためには商品開発をしたり、新しいマーケットを見つけ出したりと、打つ手はさまざまあります。しかし、商品開発も市場開拓も今すぐ結果が出るわけではありません。
そこで、今日からできる生産性を向上させるための取り組みをお教えします。それは「生産性の高い社員の“生産性の高いやり方”を可視化する」ことです。
社員の生産性は一人一人違います。全社員の生産性を算出して、生産性の高い優秀な社員を見つけだすのです。そしてその社員が行っている「生産性を上げるやり方」を全社員に共有化することで、全社員が生産性を上げることができます。
さらに「他の社員に教えることで最も高く評価する仕組み」をつくれば、生産性を上げている社員がそのやり方を教えるような組織風土を形成することが可能です。教えられる社員も同じ会社の社員ができることはできると思います。積極的に社員同士で教え合うようになるでしょう。
今までの経験上、同じ会社でも社員間で1.5倍以上生産性に差があります。裏を返せば、会社全体の生産性を1.5倍以上にするやり方が、もう既に自社の中にあるということです。生産性向上のためには、そのやり方を共有化して会社全体の成果を上げなければなりません。
生産性向上には2つの方向性があります。
1つは今取り組んでいる「時間短縮」という方向性。もう1つは売り上げや粗利益を増やして「成果を上げる」方向性です。本来、この2つの方向性で同時に進行していかなければ正しい「生産性向上」は実現しません。
時間短縮のためには、短い労働時間で成果を上げている社員のやり方を共有化すること。成果を上げるためには、売り上げや粗利益を増やしている社員のやり方を共有化すること。つまり、生産性の向上は自社の中で完結できる、決して難しいことではないことだと知ってください。
今、この2つの方向性で生産性向上に取り組んでいるでしょうか。
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