第186話 賃金を上げるよりもっと大切なことがある
2023-12-05
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これからの日本は、毎年賃金を上げることが当たり前になっていきます。この賃上げに関しては、50年前の高度経済成長時代と同じように毎年上がっていきます。そのため、賃金を上げた会社の話題が多くなるでしょう。
これは今後の社員の定着率に大きな影響を与えることになります。なぜなら、社員は「今の会社よりも高い賃上げ率の会社が多いから転職しようかな」と考える可能性があるからです。
そこで、これから経営者は2つの方法のうち、どちらかを実施することを考えていかなければならなくなりました。1つは毎年賃金を上げていくこと、もう1つは賃金を上げる方法を社員に説明することです。その2つのうちのどちらかでなければ、社員の定着率は今後ぐっと下がっていくことになるでしょう。とても心配です。
社員は近年の物価高などの影響により生活費が増えたため、この先も賃金が上がっていくかどうかは生活する上で重要な関心事になっています。
基本的に社員の賃金を上げ続けるためには、会社の業績が連続して向上していかなければならないことになります。業績が悪いときは賃金を上げることは到底できないからです。
しかし、この業績を毎年連続して上げ続けることはとても困難です。私が以前人事部長をしていた会社は、現在は東証プライムに上場するほど成長しましたが、毎年連続で業績が向上したのは最高30年間でした。経営環境の変化によって、前年よりも業績が悪くなる可能性は全ての会社にあるのです。
そのため、社員の賃金を上げようと思っても、業績が悪ければ賃金を上げることができない現実に直面し、経営者は頭を抱えます。しかし、社員に賃上げについて説明していなければ、業績が悪く賃金が上げられなかったとき、高い成果を上げている優秀な社員ほど不平不満を持ち、場合によっては会社を辞めてしまうでしょう。そのような辛い経験をしたことはないでしょうか?
どのようなときに賃金が上がるかは、会社の業績の良し悪しによって説明できます。つまり、会社の業績が悪いときには賃金が増えないことを、前もって説明するのです。会社の業績によっては賃金が上がらないことが分かれば、社員は当然「それは困る」と思うでしょう。
このことを説明するタイミングは、経営目標を発表するときです。事業年度の初めに次年度の賃上げについて説明します。事業年度の初めに経営目標と一緒に説明することで、社員は「経営目標を実現して来年の賃上げができるように頑張ろう」という気持ちになります。これは一部の優秀な社員だけではなく、全ての社員が持つ共通認識です。
このように、今働いている会社でどうすれば賃金を増やすことができるかを社員に示すことで、賃上げの報道が次から次へと流れてきても、心を揺れ動かされることはないのです。
大手企業と違い、中小企業は自社の賃上げ率について社員に説明することができなかったかもしれません。しかし、仕組みさえつくれば、経営目標発表時に毎年の賃上げ率を簡単に説明できるのです。経営者としても業績によっていくら賃上げできるか、事前に計算することができます。
さらに、業績の良いときと悪いときの賃上げ額を説明できるだけでなく、社員に対して「全社員の年収を平均30%上げたい」という宣言すらできます。あくまで「上げる」ではなく「上げたい」ではありますが、そのためには業績、特に生産性を上げていく必要があると社員に説明するのです。
残業を含む労働時間には限りがありますが、生産性を上げれば年収を30%アップすることもできます。毎年生産性をどの位向上させればよいか説明することで、社員にとって具体性のある目標になるのです。
これは中小企業だからできる方法です。年収30%アップを大手企業が宣言していることはほとんどないでしょう。
会社にとっては全くリスクがなく、社員としてもこの会社で働き続けることに前向きになる。そのような方法を考えなければならない時代になりました。
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