第178話 社員教育の究極の目的は稼げる社員にすること
2023-10-10
社員の賃金を上げるためには、社員を稼げる社員に成長させる必要があります。しかし、中小企業には「社員を成長させる仕組み」があまりありません。
中小企業では基本的に自己育成が中心であり、入社したばかりの社員に対しても先輩がその都度仕事を教える程度でしかありません。教育の仕組みがあれば5年で身に付く仕事でも、仕組みがないために10年かかっていることもあります。
会社で社員が一人前になる年数が10年かかる場合、社員を成長させるために10年間は教育投資をしていることになります。その最たるものが人件費でしょう。
もしこの10年間で社員が一人前といえるほどの成果を上げられなければ、その社員の人件費(昇給・賞与)を増やすことは当然できません。
社員を早く一人前にするためには教育の仕組みが必要です。この教育制度を1から構築したり、社内外の教育研修を受講したりする必要があるとすれば、中小企業では難しいと思われるでしょう。
しかし、社員を一人前にする教育の仕組みをつくることは決して難しくありません。どの企業にも組織原則2:6:2があり、成果の高い社員が2割、まあまあな成果を上げている社員が6割、これからの社員が2割存在しています。つまり、自社にも成果を上げている社員が2割は存在しているのです。
もっとも、この中小企業で成果を上げている社員は、社内教育によって成果を上げられるようになったわけではなく、ほとんどが自己育成の中で失敗を繰り返しながら成長し、大きな成果を上げられるようになっています。
そのため、この高い成果を上げている社員は、その成果を上げるやり方をなかなか他の社員に教えようとはしないでしょう。
そこで、この優秀な社員をモデルにして成長シート(評価シート)をつくります。その社員が何をやって成果を上げているのか(重要業務)、そしてどのような知識技術を持っているのかを評価する要素とします。成長シートは全ての社員を優秀にする教育ツールになります。
社員はこのシートに書いてあることを実行すれば成果が上がり、上司はこのシートを活用して部下指導することで、より早く部下を成長させることができます。
さらに、この優秀な社員が他の社員に対して積極的に教えるようにするために「教えた社員を最も評価する」と成長基準に明記します。優秀な社員は教えることに対して若干のためらいがあります。しかし、教えたことを最も評価すると約束すれば、成果を上げるやり方を隠すことはなくなります。
そして最も大事な指導は「教えた社員が最も優秀になる」ことです。
一般階層で優秀な社員は、いずれ中堅階層にステップアップします。中堅階層になれば部下を持ち、今度は仕事を教える立場になります。しかし、一般階層で人に教える経験をしてこなかった上司は、教えることがとても下手です。部下指導に相当苦労することになるでしょう。
今までやってこなかったことを、成長階層が上がったからといってすぐできることはありません。そのため、一般階層の段階で「仕事を教える」ことを経験しておかなければならないのです。
教育制度というと、大きな仕組みで到底中小企業ではできないと考えるかもしれません。しかし、難しく考える必要はないのです。
教育制度の元々の目的は、社員の成長を促進させることです。教育制度の根幹をなす成長シートは、教育投資も、新しい組織も必要ありません。それでも全ての社員を成長させ、上司の部下指導にも活用できる、ツールが成長シートです。効果はすぐに上がります。
自然と社員が成長し、上司は成長シートを使ってその成長を支援する。その結果社員がどんどん成長する。これによって仮に社員が10年かかって成長していたことが、5年で成長することができたとすれば、社員は今までより2倍早いスピードで稼げるようになったのです。
稼げる社員に育つことによって、社員は自ら賃金原資をつくっていることになります。「賃金をたくさん得るためには成長しなければならない」。この教育が全くされていません。
自ら稼げる社員になること、それは同時に世の中に大きな貢献ができる社員になっていることだと教育すること。これも大切な教育でしょう。
今いる社員をいかに早く一人前の社員にするか、そのための仕組みをつくって教育することで、社員は大きな成果を上げる、稼げる社員になります。
社員は思った通りに成長しているでしょうか?
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