第128話 「配属ガチャ」で会社を辞める時代を危惧する
2022-09-27
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最近のトレンドになった言葉に「配属ガチャ」があります。それは新卒入社の社員が対象の言葉です。新卒社員が希望の職種に配属されなかったことがショックで会社を辞めることがあるようです。
もしこの傾向が強まると大きな問題になるでしょう。なぜなら、日本の中小企業はメンバーシップ型雇用をしているからです。メンバーシップ型雇用とは採用前に業務内容を限定せずに雇用することです(メンバーシップ型雇用については拙著『1300社が導入した日本型ジョブディスクリプション』をご参照ください)。
ある大手スーパーマーケット会社が新卒を採用した時に、様々な部門の中でどの部門の配属を希望するかアンケートを取っていました。一番嫌がる部門がどうも鮮魚部門らしいのです。採用した以上は誰かをこの鮮魚部門に配属しなければなりませんが、鮮魚部門を希望していない社員を配属させるときに大変苦労したという話を経営者から何度も聞いてきました。しかしその配属が嫌だからといって辞めたという社員はいなかったそうです。
日本のこのメンバーシップ型雇用は欧米のジョブ型雇用とは違い、とても理にかなっていると私は思っています。
私は前勤務先で人事制度をつくりましたが、新卒採用の取り組みや決算書の作成、パソコンでビックデータの分析など、他の業務も経験してきました。店舗では刺身の盛り合わせを作り、販売やレジ打ちもしました。商品センターでは商品管理や全店のマグロ加工を一括で行い、輸配送する仕事にも取り組み、ブロック長として各店舗の指導をしたこともあります。新規事業として寿司事業を立ち上げたこともあります。色々な仕事を経験することができました。
そもそも大学で学んだことと勤めた会社で実際にやったことは、ほとんど関係していませんでした。様々な仕事を経験することによって、自分が思っていた得意分野と様々な仕事をやった上で分かった得意分野にはギャップがあることが分かりました。
通常は自分の特性を自分なりに理解し、こんな仕事が向いているのではないかと自己判断をしていましたが、様々な仕事を経験することによって色々な自分を確認することができ、結果的に自分の特性を最大限生かすことができたと今では思っています。
「マグロの解体ができるコンサルタント」。これが私のセミナーの最初のアイスブレーキングの話ですが、様々なことを経験することが自分の人生においてとても大切であると今でも思っています。
それゆえに今、何かやりたい仕事があって、それ以外の仕事をする部署に配属されたら辞めてしまう「配属ガチャ退職」が流行してしまったら、折角のチャンスを無駄にすることになると思います。
日本には日本特有の長年の雇用形態があります。欧米型のジョブ型雇用がいいのか日本のメンバーシップ型雇用がいいのかは、これから長い年月をかけて検討されることになるでしょう。
どちらがいいのか判断基準は決まっています。日本では社員が定着し、成長し、そして業績向上につながっていく雇用方法が良いのです。それをこれから私たちの世代から次の世代、またその次の世代と、多分100年ぐらいかけてこの問題は検討されていくことになるでしょう。もちろん、検討は評論家に任せ、私たちは自分の判断で実践していきましょう。
ただ、この問題を知って頂くために書いた私の書籍はとてもお役に立ちますのでお読み頂ければと思います。理論を振りかざす内容ではなく、実践書である『1300社が導入した日本型ジョブディスクリプション』です。
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