第102話 新しい部署に異動になったら昇給・賞与は下がりますか?
2022-03-15
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3月決算の会社は、4月に人事異動を行うことが多いと思います。
社員は異動によりさまざまな職種の仕事を経験することで、徐々に自身の適性が分かってきます。例えば「営業職」から「生産職」や「企画職」といった、全く別の職種の部署に人事異動することで、今まで想像していたものと実際の仕事内容は大きく異なると初めて知ることもあるでしょう。
欧米のジョブ型雇用と違って、日本はメンバーシップ型雇用で現在採用しているため、入社してからさまざまな職種を経験できることは社員本人にとっても良いことだと思います。
この職種間異動に関して、考えなければならないことが一つあります。それは異動した社員の昇給・賞与についてです。
仮に、会社に成長シートがあったとします。成長シートは各部署それぞれの優秀な社員をモデルにしてつくられており、その点数(成長点数)で社員の成長の度合いを計ります。
Aの部署でとても優秀な社員が、Bの部署に異動します。今のA部署の成長シートでは成長点数が80点ですが、新しいB部署に行って仕事に取り組み始めた時、B部署の成長シートでは成長点数が20点(スタート時の成長点数)になる可能性があります(もっとも、我が社の社員として守ってほしい勤務態度は部署によって変わることはありませんので、スタート時から成長点数が40点以上となるケースもあるでしょう)。A部署の成長点数をそのまま引き継いで80点からスタートすることはありません。A部署とB部署の成長シートの内容が異なるからです。
このとき、成長点数で昇給・賞与を決める仕組み(賃金制度)を運用していた場合、「職種が変わって成長点数が下がった時の昇給・賞与はどうなるのか?」と社員は心配します。
私はその会社の人事制度構築のアドバイスをする時に「新しい部署に異動したら昇給・賞与は減りますか?」と経営者にお聞きします。経営者が「いいえ、チャレンジによってその社員がさらに大きく成長することを期待して異動してもらいますので、昇給・賞与を下げることはありません」と答えたとすると、この会社は昇給・賞与を決める時には、異動前の成長点数80点で昇給・賞与を決めていたということです。今まで決めていたことを、問題がないのに変更してはいけません。もちろん、異動後は新しい部署の成長シートで評価をしますが、あくまでそれは社員の成長を確認し指導するために活用します。
全ての会社の人事制度は「どうやったらうまくいくのか?」ではなく、「現在やっていること(評価・処遇)」を可視化して構築します。今回の会社の場合は「成長確認をする成長点数」と、「処遇(昇給・賞与)を決める時の成長点数」は違うことを可視化し、仕組みにしました。
現在やっていることを仕組みにすることからスタートです。そしてその後、仕組みを運用しながら問題があったら見直しをしていきます。
人事制度の導入とは、仕組みとして可視化して社員に説明することを意味します。「どうやったら正しいか?」という“仮定”ではなく、「今までどうやってきたのか?」という“前提”を可視化するということ。これができなければ社員にとって訳の分からない、運用できない人事制度になります。この点は特に注意が必要でしょう。
人事異動の時期になるとこのような質問が一気に増えます。参考にしてください。
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