第101話 ベースアップは今の時代も必要ですか?
2022-03-08
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現在、マスコミから各大手企業の春闘労使交渉についての報道が続いています。その中で、ベースアップの実施企業の割合も合わせて発表されています。2022年のその割合は昨年より増えそうです。
この大手企業の動向を参考にして、ベースアップを行いたいという中小企業の経営者が一定の割合でいます。
日本全体として、今までの傾向で考えればそれも頷けます。もともとベースアップは消費者物価指数や、労働力の需要と供給の関係、または生産性の向上とさまざまな理由で行われてきたものです。その中で一番中心となる要因は、やはり消費者物価指数でしょう。
賃金を30万円支給されている人が、仮に消費者物価指数が2%アップすれば6,000円分の可処分所得が減る可能性があります。これでは生活が厳しくなりますので、社員からすれば6,000円分ベースアップの要求になるでしょう。企業もその消費者物価指数を参考にベースアップしてきた過去があります。
しかし、総務省統計局の消費者物価指数(総合)のデータを見ると、2015年は前年比0.5%アップ、2020年は前年比0%と変わらず、2021年には前年比0.2%ダウンという結果が出ています。
仮に消費者物価指数を基にベースアップするのであれば、消費者物価指数が下がったときにはベースダウンしなければなりません。このベースダウンの話は当然今まで出てきたことはありません。もし実施したら、社員からの反対は必然でしょう。だからこそ、消費者物価指数を基にしてベースアップをしてはいけないと考える経営者もいるでしょう。
ここで考えておくべきことは、ベースアップをするにしても昇給をするにしても、この賃上げをするための原資は同じところから出ていることです。そのため、中小企業の場合は、経営環境の変化で社員に一律にベースアップすることよりも、昇給をどのように決めるか、明確にすることが大事でしょう。
この昇給は「企業の業績」と「社員の成長」によって決めることができます。社員の成長は基本的に成長等級と成長点数の二つのデータで確認することができます。これによって、昇給を実施する1年前の時点で、昇給の決め方について明確に説明することができます。
ベースアップを労使交渉や消費者物価指数で決めるよりも、会社の業績に合わせて昇給原資を決め、そして社員の成長に伴って昇給金額を決めていく方が、納得できる説明を社員にすることができるでしょう。
この昇給額は交渉ではなく、仕組みによって決めることがベストです。社員にとっても安心です。そしてこの仕組みがあれば、社員はこの先自分の40年間の賃金がどうなるのかも分かります。
労働人口が減っていく日本において、ベースアップの役割はほぼ終わったと考えていいでしょう。その一方で社員の昇給がどう決まるかを仕組み化して、交渉をせずに昇給が決まるような仕組みが求められるようになりました。
この仕組みをつくることは、社員の定着率を高めるためにとても重要な仕組みといえます。
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