第100話 今、経営者が社員に一番優先して教育しなければならないこと
2022-03-01
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最近のテレビコマーシャルや雑誌等を見ていると、賃金を上げるためには転職が必要であるようなイメージの転職サイト広告が多いと感じます。
確かに、転職してさまざまな会社で仕事を経験することで、視野を広められることは間違いないでしょう。その点においては、転職をして学ぶことは決して無駄ではないと考えます。
しかし「転職すれば賃金がアップする」ことについては、大きな誤解があります。転職すれば必ずしも賃金がアップするわけではありません。前の会社より高い賃金で採用されたとしても、生涯賃金の視点から見ると、転職により低くなる可能性があるからです。
転職して同じ職種に就いたとしても、会社によって細かい仕事内容は異なります。つまり、Aという会社で優秀だと評価された社員が、Bという会社でも優秀だと評価されるとは限りません。
優秀だと評価されるAの会社で働き続けた方が、最終的な賃金は高くなることは想像に難くないと思います。
社員を評価する違いは、成長シート(その会社で優秀な社員をモデルにしてつくったもの)を比べれば分かります。今まで1,331社の成長シートを見てきましたが、業種は同じでも同じ成長シートは一つもありませんでした。
採用する側は前の会社の評価をそのまま鵜呑みにしてはいけないのです。応募者の前の会社の評価を聞き、優秀だと思って採用した中途社員が、思ったほど力が発揮できないことは、多くの会社で常々実感しているでしょう。
ただし、面接時に前の会社に成長シートがあれば持ってきてもらい、成長点数を聞くことで、前の会社でどのような評価をされていたのか、そして我が社で採用したときにどのくらい活躍してもらえるか、参考にすることはできるでしょう。
この評価の違いがあることを知らない社員は、さまざまな転職の情報を聞くたびに「転職を繰り返すことで徐々に賃金が上がる」と誤解している場合が散見されます。安易にその広告に乗って転職を決めてしまったら、その社員の人生にとってプラスにはならないでしょう。
そうならないためにも、前もって社員に教育しなければならないことがあります。それは「今の会社でさまざまな仕事をしながら自分の適性を見極め、そして優秀になっていくことで賃金が上がる」と明示することです。
欧米と違い、日本では一つの職種で転職を繰り返しながら賃金を向上させ続けることは難しいと言わざるを得ません。なぜなら、日本では一生一般職層(プレーヤー)として仕事をするのではなく、一般職層で優秀であれば次は中堅職層にステップアップし、部下を成長させる仕事に携わります。その成長に応じて賃金が増えていくのです。この考え方を日本のほとんどの経営者が持っています。
賃金を上げるために転職を繰り返すよりも、一つの会社で一般・中堅・管理職層と成長する方が将来的な賃金は高くなると社員に説明しなければなりません。社員はじっくり腰を据えて成長することになるでしょう。
私の前勤務先の定着率は、44年前の入社当初は70%でした。しかしその後、人事制度によって「我が社で成長することで生涯賃金が増える」と明確に説明できるようになったことで、定着率は95%までアップしました。その後、社員の定着とともに社員が確実に成長していき、業績が向上しました。
日本では最近、社員の定着率はさらに低下していくだろうという風潮が高まっています。正しい教育が、中小企業の経営者に今最も求められていることだと考えてください。
今年の新卒社員の採用時の教育はここからスタートです。
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