第19話 賞与がゼロでも納得する賞与説明法とは
2020-05-19
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「社長、お話があります」
社員からそう言われて、ドキリとした経験を持つ経営者がほとんどでしょう。特に昇給や賞与を支給した後ではなおさらです。だいたいが「納得できない」という話だからです。
「金額に納得できない」「あの社員より少ないことに納得できない」など……これらの「納得できない」に対して上手く説明し、納得させられなければ、その社員が退職してしまう恐れがあります。
もうすぐ、経営者が夏の賞与について考え始める時期ですが、今回は特に気が重い経営者が多いでしょう。新型コロナの影響で多くの企業は売り上げが大きく減っているからです。
「本当なら出せそうにないですが、社員の生活を考えたらゼロというわけにもいかないと思っています……どうすればいいでしょうか?」
そんなご相談を頂くようになってきました。
「だからこそ、今がチャンスです」
私はそうお伝えしています。
前回まで、テレワーク用の成長シートをつくることを説明してきました。その際、実際にご相談頂いた方に説明しているのが、「昇給・賞与はテレワークを始める前の成長点数で決めてください」ということです。そう説明すれば、テレワーク用の成長シートの内容がどのようになっても、社員は不安に思うことはないからです。ここが最も大事です。
そうすると今回の夏の賞与も過去の成長点数で決めることになりますが、業績が大きく下がっている今、成長点数が保証されたところで、賞与はほとんど出ないと社員は考えているでしょう。
そうです。賞与の金額は会社の業績によって大きく変わります。今がそのことを社員に説明するチャンスなのです。
逆に言えば、会社全体の業績が良くなれば全社員の賞与が増えます。テレワークなど、事業や働き方が大きく変わったとしても、お互いに協力し合って教え合って、会社全体の業績を上げることができれば、全社員の賞与は増えるのです。
今が一番、そのことを説明できるときなのです。
通常であれば、全社員がそれぞれ自分の成果を上げてアピールし、賞与を増やそうと考えているでしょう。
しかし、現在のような状況ではそれは叶いません。
ただし、全社員がお互いのやっていることを共有化して成果を上げれば、間違いなく賞与原資が増えて、それぞれの社員の賞与が増えるのです。
残念ですが、この苦しい中で賞与原資が0円のときに賞与を出したとしても、社員はこう考えます。
「まだ会社には余力があるのだな」
社員と経営者は見ている世界が違います。こう考えてしまうことは仕方のないことです。
ですから、優れたやり方を共有化していくこと。
そしてそのことによって業績が上がれば、賞与原資を増やせること。
このことを冷静に説明できる今のタイミングで、業績と賞与の関係を説明してください。
大手企業と違って、中小企業はなかなか業績と連動して賞与を決定していることを説明することができていません。大変厳しい時期ですが、だからこそ社員に説明できるチャンスだとお考えください。
そして、この厳しい環境の中でも優秀な社員がやっていることを共有化すれば業績が上がることを理解してもらってください。そのために会社側では、会社のどのような業績だったときに賞与原資はどのようになるのか、数字で具体的に示してください。
説明は賞与を支給する当日では意味がありません。
今すぐにこれまでの賞与の支給実績を分析して、賞与原資の計算式を示してください。
これが事前に示されていれば、たとえ残念ながら賞与がゼロであったとしても、社員は不満に思うことはありません。みんなで協力しあい、新しいことに挑戦して優れたやり方を共有しあい、次こそは賞与をもらえるようにしよう! と考えることでしょう。
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