第12話 働き方改革倒産の危機
2020-03-24
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「同一労働同一賃金が始まったら、パートさんの賃金は正社員並みに上げる必性はありますか?」
2020年4月から同一労働同一賃金が始まります。中小企業は1年先送りされて2021年の4月からですが、心配に思われている経営者の方から質問がありました。
同一労働同一賃金をよく理解していないと、企業の人件費はとんでもなく増えることになります。ある数字を知っている経営者であれば、その影響の大きさに頭を抱えていることでしょう。
それは、人件費係数です。
人件費係数とは総額人件費を所定内給与で割った数字です。この数字は、正規雇用社員と非正規雇用社員では違います。正社員とパートさんとは1.3倍以上違います。
たとえば正社員であれば、この人件費係数は1.6くらいが中心値でしょう。もっとも賞与が多かったり、また多額の退職金の積立をしている会社であるとすれば、この数字は更に増えていくことになります。
その一方で、パートさんの場合にはこの人件費係数が1.2前後です。それは、賞与がなかったり、退職金がなかったり、場合によってはある条件を満たしていないために社会保険に加入していないというケースもあるからです。そのためにこの人件費係数が低いのです。
もしこの同一労働同一賃金をそのまま企業に適用すると、正社員とパートさんがまったく同じ人件費係数になります。
たとえば新卒社員を20万円で採用して、人件費係数が1.6の場合は、毎月32万円の人件費を負担しています。あるパートさんの所定内給与が20万円の場合、今まではパートさんの人件費係数が1.2だったため、24万円の人件費でした。しかし、同一労働同一賃金で人件費係数が正社員と同じ1.6になると、32万円の人件費になります。
つまり単純計算ですが、このパートさんたちの人件費が一挙に今の1.3倍以上に増えることになります。賃上げ率33.3%、このインパクトは大きいです。
ここまで人件費が増えたら、とても経営としては成り立たない「人件費倒産」ということがあり得ます。同一労働同一賃金を守ったら「人件費倒産」になったというニュースが、これから出てくることになるでしょう。今は確かに業績の低下を、歯を食いしばって食い止める必要があります。しかし来年の4月は待ってくれません。
また、諸手当も同一労働同一賃金の対象です。
たとえば正社員に人事管理上の目的で精勤手当を支給しているのであれば、パートさんにもこの精勤手当が必要になります。
生活費を補助する目的で、家族手当・住宅手当・地域手当・寒冷地手当・食事手当を支給しているのであれば、パートさんにも必要になるでしょう。
また基本給を補完する目的として役職手当・技能手当・危険手当・仕入手当等があるとすれば、これも同じ条件で仕事をしているパートさんには支給が必要になります。
さらに厄介なのは、正社員に年齢給・勤続給を支給している場合です。この場合、正社員と同じようにパートさんにもこの年齢給や勤続給を支給する必要が出てきます。
しかし、この問題の解決方法を提示している専門家は、少ないのです。
スタートする段階で解決方法がない。大変な状況です。
今から準備しないと、来年の4月には間に合わない段階を迎えています。中小企業では知恵を絞って最善の対策を立てなければならないときが来ました。
正しく人事制度をつくり説明できるようになれば、来年の4月は怖くありません。
その準備は進んでいるでしょうか。
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