第62話「定着率を高める正しい方法」
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多くの経営者の悩みの一つが社員の定着率です。しばしば成長塾に参加された経営者が人事総務職の成長シートの期待成果に「定着率」を入れます。
しかし、そのあとに詰まってしまうのが、定着率を高めるための重要業務を明確にすることができないことです。
今まで、さまざまな定着率を向上させる取り組みを行ってきたのでしょうが、その具体的な業務を特定することができません。それには大きな理由があります。
それは、これまでに退職した社員がどのような理由で辞めたのか分かっていないからです。
人によって辞める理由はさまざまでしょう。しかし、それぞれの企業によって理由が特定されなければなりません。
ある北海道の酪農業の会社は、社員が5~6年経つと辞めるという悩みがありました。経営者は、この理由をまったく分かりませんでした。
「この牧場に学ぶことがない」と言って一般職層の社員が辞めていくのですが、経営者は、一般職層の次に中堅職層や管理職層の仕事もあると常々言っています。でも経営者の言っていることが社員には理解できません。
それは、その経営者の言っていることが社員から見えないのです。つまり、信じられないのです。会社の制度として経営者の言っていることが可視化されていなかったため、その退職が発生していたのです。
そこで、一般職層、中堅職層、管理職層の成長階層を明確にしてそれぞれの階層の成長シートを作成し、どのように成長し、ステップアップをしていくか、成長の階段を全社員に示しました。
この酪農業の経営者は8年前に成長塾に参加されましたが、そのあと辞めた社員は1人。それも実家の酪農業の会社に戻ったのであり、今までの退職の問題はすべて解決しました。
人事の問題は、すべて個別対応して解決すると思ったら大間違いです。そのやり方をしていたら、いわゆる「もぐらたたき経営」になります。問題が出たら打つということを繰り返し行っていくと、同じ問題が永久に発生することになり、嫌気がさすでしょう。
人事の問題は個別の問題として対応解決するのではありません。必ず仕組みをつくって解決するのです。仕組みをつくって解決をすれば、同じ問題は二度と発生しません。
苦労するために人を採用しているわけではありません。問題を仕組みで解決して、楽に経営をしていかなければなりません。その考え方がとても重要です。
定着率を考える必要がある会社は、まずはどうして人が辞めるのかその本音を聞かなければなりません。
通常は本当のことは言いません。おおむね嘘をついて辞めます。社員の本音を聞く方法をぜひ考えてください。
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