第4話 後継者が絶対に誤解してはならないこととは
2020-01-28
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最近は後継者の方からのお問合せが増えてきています。その中でしばしば聞かれるのが、
「私一人だけで成長塾に参加してはだめでしょうか?」
という質問です。
経営者から事業承継を行うにあたって、最も重要な仕組み、人事制度をつくりたいという気持ちを強く持っている後継者が多いようです。ただし、「実は経営者があまり人事制度構築に乗り気ではなくて……」という悩みもまた、少なくありません。そのため、このような問合せがあるのです。
では、後継者として人事制度をつくるときに何に気を付けたらよいか、それは人事制度をつくるときに、「後継者の考えで人事制度をつくってはいけない」ことです。
特に、経営者と後継者が親子という関係にあるとやってしまいがちなことが、「経営者のやってきた評価や賃金の決め方は間違っている。だから事業承継のタイミングでこれを直そう」と考えることです。
経営者が行ってきた評価や賃金の決め方が間違っていることはないと、私は断言します。なぜなら、これまでその会社が存続してきたからです。それはその経営者を信じて、経営者の決めたことについてきた社員がいるからです。それが何よりの証拠です。
つまり、経営者の評価や賃金の決め方は「正しい」のです。にもかかわらずこれまで会社が存続してきたことを否定するかのように、「正しい人事制度がつくりたい」と考えた後継者が頼ってしまうのがコンサルタントです。これを行ってしまえば、後継者が組織を壊すことになってしまいます。
残念ながら、すべての会社が共通して使えるような人事制度はありません。どの会社にも当てはまる人事制度であれば、どの会社にも当てはまるように曖昧な内容です。結局活用はできません。
経営者によって評価も処遇も違います。100社あれば100通りの人事制度をつくることになります。その会社で働いたこともない、評価や昇給・賞与を決めたことのないコンサルタントが、その会社の人事制度をつくることはできません。私にも無理です。
私は今まで1,243社の人事制度をつくってきましたが、これは私が「経営者がこれまで決めてきた評価や昇給・賞与の決め方を可視化する仕組みをつくった」からこそ行えたことです。私は「このように評価をしなさい」とも「このように昇給・賞与を決めるのが正しい」とも、言ったことはありません。答えはその会社の経営者しか持っていないからです。
1社として同じ人事制度をつくった会社はありません。成長シートもそうです。賃金表もそうです。全く違うものをつくってきました。
後継者が人事制度をつくるときには、「100年間活用できる人事制度をつくる」という考え方はやめなければなりません。そして「経営者のやり方は間違っている」という考えも捨ててください。後継者が失敗せずに人事制度をつくる唯一の方法は、「まずは目の前にいる経営者の評価や昇給・賞与の決め方を可視化する」という役割を担うことです。
経営者は何を褒め、何を叱ってきたのか、そして処遇(昇給・賞与・昇進・昇格)をどのように決めてきたのか。それを聞き出しながらまとめることです。そこには後継者の考え方が少しも入ってはいけないのです。
往々にして後継者は、様々なところで学んでいることが逆効果になり、経営者が褒めていることや処遇の決め方を
「そんなこと褒めていたら、この企業はダメになる」
「そんな賃金の決め方をしていたら、社員はやる気がなくなる」
「○○のようにすべきだ」
と否定的な意見を出すようになります。
それは後継者が会社を良くしたいと強く想うからこそ、そして理想を高く掲げる経営者と同じ価値観を持っているからこそでもあります。それがわかっているからこそ「今後は経営を任せるのだから、その意見を少しは取り入れようか」と頷いてしまう経営者もいます。
しかし、それをしてしまえば、人事制度は既にその会社の人事制度ではなく、うまくいくかどうかはわからない、ほぼリスクしかない人事制度になります。
以前、ある後継者は「経営者の想いが社員には見えない」と思い人事制度づくりに取り組みました。ただしこの後継者が素晴らしかったことは、今いる優秀な社員がどのような社員なのかを可視化することをしっかりと守って取り組んだことです。そして、「今いる優秀な社員は、すべて先代の経営者が言っていることを守ってきた社員だ」と気付かれたことです。
だからこの後継者が人事制度をつくっても、組織が壊れることはありませんでした。
後継者は、まず経営者がやってきた評価や処遇をまとめた人事制度をつくること。そしてその人事制度から経営者の考えをしっかりと理解し、そのまま少なくとも3年間はそれを運用すること。その後は、運用しながら、問題点を確認し、後継者の想いで改善していけばいいのです。そうすることで、より社員が定着し、成長し、優秀な社員が採用できるようになります。
「経営者の考え」。答えはそこにある。まずはそこを否定しないことです。
人事制度がうまくいっているかどうかは、社員が定着しているか、成長しているか、採用できるかで判断します。
そのことを知った上で、後継者は人事制度をつくってださい。
事業承継をお考えで人事制度をまだつくっていない場合は、ぜひ早いうちに人事制度構築に取り組んでください。
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