株式会社プレテック・エヌ様(産業用機械の設計・製造等 新潟県)
優秀な従業員を可視化し、公平に評価できる人事制度を構築したいと考え、成長塾で人事制度づくりを学ばれた株式会社プレテック・エヌ 代表取締役 永井 宏明氏に、その経緯と効果について詳しく伺いました。
●会社プロフィール
社名 株式会社プレテック・エヌ
代表者 代表取締役 永井 宏明
所在地 〒940-2045 新潟県長岡市西陵町221-28
従業員数 57名
事業内容 産業用機械の設計・製造、各種切削・研削による精密金属部品加工、車載用部品製造
URL https://www.pretech-n.co.jp/
1.産業用機械や車載用メータ一の製造に携わる
――株式会社プレテック・エヌの会社概要をお聞かせください。
1916年(大正5年)に、曾祖父が設立した永井鉄工所が当社の始まりです。設立当時は、長岡市で石油が掘り当てられたこともあって、それにともなう採掘機械の製造・保守・メンテナンスの需要が増加し、永井鉄工所も主に石油掘削機の部品などを製造していました。以来、金属加工をはじめとして、精密性が要求される機械部品の製造、さらには設計や組立を含む産業用機械の一貫生産へと領域を広げてきました。
具体的には、工場の生産力アップや省力化に役立つ、安全で使いやすい産業用機械を製作しています。設計はもちろん、お客様からお預かりした図面をもとに製作することも可能です。これまで、食品・印刷・医療機器・航空機部品など、さまざまな分野のお客様に当社の産業用機械をお使いいただいています。
また、国内有数の計器・センサーメーカーからの依頼により、二輪車を中心とした車載用メータ一部品やスピードセンサーの組立にも携わっています。部品加工、製造、検査、納入それぞれの過程で厳密な品質管理を実施。高品質な製品を長年にわたり遅延なく製造・納入することで、現在も高い信頼をいただいております。
当社の商号、プレテック・エヌの由来は「正確・精密(PRECISE)なモノ造り」「優れた技術力(TECHNOLOGY)の開発・提供」「次代への新たな(NEW)挑戦」。この商号をモットーに、100年にわたる歩みのなかで磨き続けてきた技術と、常に改良を重ねてきた品質管理体制を活かし、お客様と地域のために社員一丸となって業務に取り組んでいます。
――永井様の経歴をお聞かせください。
大学卒業後、2年ほど東京のIT企業で働き、2000年に新潟に戻ってプレテック・エヌに入社しました。事業承継が既定路線とはいえ、知識も理解も不足していましたから、会社経営は大きな不安でした。そこで、当時の代表取締役である父の勧めもあって、2011年に独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営する「中小企業大学校東京校」で、経営後継者研修を受講。経営のイロハはもちろん、講師や参加していた後継者との交流を通じて、事業承継への意識を高めていきました。その後、2018年に代表取締役に就任し、現在に至っています。
2.年功序列型の給与体系に疑問を感じる
――成長塾を受講した背景をお聞かせください。
入社した当時から、評価と処遇(昇給・賞与)に疑問を感じていました。いわゆる年功序列型の処遇で年齢によって基本給が決まり、昇給に関しては一律、賞与総額に関しては業績をベースに算出していました。一見すると公平に見えますが、頑張っても頑張らなくても給料は同じ。極端な話、適当に働いていても給与は下がりませんから、公平とは言えません。
「給料をもらえれば、それだけでいい」という従業員には、とても居心地が良い会社だったと思います。逆に上昇志向の強い優秀な従業員は、いくら頑張っても頑張らない従業員と給与は変わりませんから、当社に見切りをつけて辞めていきました。こういう状況だったため、社内は殺伐としており、活気がありません。この状況を打開し、活気溢れる生産性の高い会社にしたいと常々思っていました。
――そうした給与体系を改善する施策は行ったのでしょうか。
2013年に、経営コンサルタントを招いて人事制度を構築しました。年齢だけでなく、業務の評価、技術手当を含めて総合的に評価する人事制度を導入することができました。しかし、評価方法に問題がありました。基準となる従業員を選定し、その従業員と評価対象の従業員を比較する相対評価だったため、従業員への説明に困窮。「あの従業員と比べてあなたはこうだから」とは言えません。当然、従業員から賛同を得られるわけがなく、私自身もこの人事制度に納得することができませんでした。
3.松本先生のセミナーを受講し、人事制度に共感
――成長塾と出会ったきっかけをお聞かせください。
中小企業大学校を含め、さまざまな研修を通じて知り合った方々に、おすすめの人事制度を伺う日々が続きました。そんなとき、懇意にさせていただいた経営者から紹介してもらったのが松本先生の成長塾でした。早速、松本先生が講師を務められていた2016年5月開催の「トップセミナー(2) 業績向上型人事制度~人事制度の見える化~」を受講。その際「経営者の想いと従業員の働き方を可視化して仕組みにする」という松本先生の人事制度に共感し、率直に素晴らしいと思いました。
ますます興味が湧き、7~9月にかけていくつかの松本先生のセミナーを受講。そのなかで松本先生とお話しする機会を得て、当社の人事制度の問題点を相談させていただきました。すると「早急に改善が必要です。成長塾を受講すれば解決できるはずですから、すぐに受講してください」というお言葉をいただきました。それを受け、その年の12月に成長塾を受講しました。
――成長塾受講の感想を教えてください。
成長シートを通じて「経営者の想いと優秀な従業員を可視化して仕組みにする」を実践できる点に感銘を受けました。しかも、相対評価ではなく絶対評価ですから、従業員にも分かりやすく説明することができます。あらためて、この人事制度を導入したいと思いました。
4.係長が成長シートを作成し、運用しながらブラッシュアップ
――受講後の運用状況を教えてください。
当時、期末は2月でしたから、新しい期が始まる2017年3月から仮運用を始めました。成長シートについては、私が現場のことをしっかり把握できていないこともあり、一般階層の従業員向けの成長シートづくりは、中堅階層である係長に任せることにしました。係長を評価する成長シートについては私がつくりました。
具体的には、9部門の係長を集めて成長シートの説明を行い、まずはたたき台をつくってもらってから会議で議論を数回繰り返し、成長シートの精度を高めていきました。以前導入した人事制度は、従業員一同からかなり反発がありましたが、成長塾の人事制度は優秀な従業員を可視化して評価する仕組みということもあって、すんなりと受け入れられた感覚がありました。
その後、部門の統廃合がありましたが、部門ごとに成長シートを運用し続けてブラッシュアップを実施。成長シートの評価を賞与に反映させたのは2019年からで、給与との連動は2022年7月からです(現在は6月が期末、7月が期初)。ようやく本運用が始まったと安堵しているところです。
――人事制度導入後の定量的効果をお聞かせください。
人事制度導入後の2019年7月~2020年6月、2020年7月~2021年6月、2021年7月~2022年6月の3年間を比較した定量的効果を以下に示しました。
※クリックで拡大
2019年7月~2020年6月はコロナ禍が始まったときで、売り上げが落ち込みました。その後も部品調達に時間がかかるなど、コロナ禍の影響はあったものの、2020年7月~2021年6月、2021年7月~2022年6月は売り上げが回復。人事制度導入による効果もようやく出始めてきていると感じていますので、今後は会社も従業員も大いに成長できると確信しています。
5.係長の高いモチベーションが従業員にも波及
――どのようなところで人事制度の効果を感じますか。
もっとも感じるのは、係長のモチベーションです。成長シートの「期待成果」「重要業務」「知識技術」によって優秀な従業員が可視化され、本当の意味で部下を公平に評価できるようになったことが係長のモチベーションにつながったと理解しています。
実際、3カ月に1回、私を含めて役職者が全員参加して行う成長支援会議では、係長が従業員の評価に対して積極的に発言する姿が見られます。とくに勤務態度については、部門が違えど階層ごとに同じ基準を使っているため、部門を超えて従業員の評価が可能。自分の部門以外の従業員に対しても「こういうところがとても良かった」「こういうことがあったので注意した方がいい」など、係長が積極的に発言してくれます。成長塾の人事制度を導入する前までは、こういった積極的な発言はありませんでしたから、意識は大きく変わったと言えると思います。
係長と部下のフィードバックにおいても、やる気が感じられます。例えば、フィードバックの内容はフィードバックシートに記載して成長支援会議内で議論し、最終的な評価につなげていますが、その際も、部門を問わず「その評価はおかしい」「もっと評価を上げてもいいと思う」といった係長の意見が飛び交います。熱い議論のなか、最終的には成長支援会議の参加者全員が納得して評価を決定している状況ですから、これまでにない良い傾向だと感じています。
――一般の従業員への効果はいかがですか。
現場の従業員と関わる機会が少ないため、成長支援会議などのなかで係長から従業員の話を聞くようにしていますが、それによると係長のモチベーションの高さが従業員にも波及し、今まで以上に成長している従業員が増えたとのこと。業務の詳しいことは私が知識不足のため、割愛させていただきますが、従業員の成長が売り上げアップにつながっていると考えています。
また、不平不満を言う従業員がほとんどいなくなったと聞いています。確かに以前は不満をもらす従業員が少なからずおり、前述したような殺伐とした雰囲気を感じることがありましたが、現在はそういった雰囲気はありません。むしろ、穏やかな中でもやる気に溢れた雰囲気が漂っています。フィードバックや成長支援会議を通じ、従業員も納得感が高まったのかもしれません。また、成長シートをもとに、どこに取り組みどこを頑張れば処遇(昇給・賞与)に反映されるか、具体的に認識できたのが大きいと考えています。
6.2023年初頭から「riyaku(りやく)」を本稼働
――人事制度構築・運用システム「riyaku」を導入されたと伺っています。
当社はMicrosoft Teamsなどを導入しており、ITシステムの利用に抵抗がありませんから、2022年11月に「riyaku」の契約をさせていただきました。もちろん、機能面も高く評価して導入しています。具体的には、今年の年末に支給する冬季賞与の計算について、これまでのExcelの場合と「riyaku」で比較・検証させていただきました。その結果、ほとんど差がなかったため、実用的に利用できると判断しました。また、当社は3階層ではなく4階層で運用していますが、「riyaku」はオプションによって4階層で運用することが可能という点も評価しています。
現在は過去の成長シートのデータを入力するなど、データを「riyaku」に集約している状況で、成長戦略会議でも「年明けの2023年から本格的に使っていきます」と告知済みです。ただし、本格的に運用するには、製造現場の従業員がスマートフォンやタブレットなどで入力できる環境が必要になります。タイミングを見計らいながら、環境整備も行っていきたいと考えています。
7.人事制度に悩んでいる経営者には松本先生の書籍がおすすめ
――人事制度に悩んでいる中小企業に向けて、アドバイスがあればお願いします。
成長塾の人事制度に感じるのは、経営者が心身ともに楽になれる仕組みだということ。これまで悩んでいたことが、ウソのように晴れやかになります。
もちろん、それだけではありません。当社の場合、中堅階層の係長を通じて従業員の成長、そして会社の成長も期待できます。人事制度に悩んでいらっしゃるなら、まずは松本先生の書籍をおすすめします。興味が湧いたら、ぜひ成長塾を受講してみてください。
――最後に一言お願いします。
全国大会やお客様の視察会など、松本先生とお会いし直接お話を伺える機会をとても楽しみにしています。残念ながら、コロナ禍以降はそういった機会が減りましたが、またいつかお会いできる日を期待しています。その際には、いつものように豊富な見識や的確なアドバイスがいただけたら幸いです。今後とも何卒よろしくお願いいたします。
やりがいや面白さを感じることができる会社です
株式会社プレテック・エヌ様、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
※株式会社プレテック・エヌ様のホームページ(https://www.pretech-n.co.jp/)
※取材2022年12月
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