株式会社エムエス様(住宅機器修理・販売・施工・住宅リフォーム 茨城県)
評価や給与の仕組みを制度化して従業員を定着させるため、成長塾で人事制度を学ばれた
株式会社エムエス 代表取締役 篠田 吉孝氏に、その経緯と効果について詳しく伺いました。
●会社プロフィール
社名 株式会社エムエス
所在地 〒311-4151 茨城県水戸市姫子1丁目89番地1
資本金 10,000千円
設立 1987年
従業員数 70名(パートを含む)
事業内容 住宅機器修理・販売・施工・住宅リフォーム
URL http://www.make-smile.jp/
1.TOTO製品のメンテナンス代行事業とリフォーム事業を展開
―― エムエスの会社概要をお聞かせください。
当社は1987年、水まわりのメンテナンスを行う会社として設立しました。主な業務は2つあります。ひとつはトイレやバスルーム、キッチン、洗面台といったTOTO製品の修理や取り替え業務を行うTOTOメンテナンス代行店事業部です。当社のTOTOメンテナンスに精通したカスタマーエンジニアがお客様宅に伺い、状況確認、診断、修理・取り替えを実施。迅速、正確な対応でお客様を笑顔にするサービスを心がけています。
もうひとつは、茨城県内を対象とした地域密着のリフォームを手掛けるエスアール事業部です。水まわりなどの部分的な改修から家一棟丸ごとのリフォームまで、経験豊富なリフォームアドバイザーが一貫して対応。ヒアリングから施工までのワンストップサービスでお客様の希望をしっかりと実現し、家族が笑顔になるリフォームを提供しています。
当社がテーマにしているのは、お客様の「困った」を「良かった」に変えること。これからも、このテーマを胸に刻み、自分たちが今できることに全力で対応してまいります。
2.評価と給与の制度がなかったため、入社2~3年目で退職する社員が続出
―― 成長塾を受講した背景をお聞かせください。
早急な待遇面の改善に迫られていたことが背景にありました。1998年に先代の父が設立した当社に入社し、2011年に代表権を譲り受けて事業承継するまで、メンテナンス業務を習得するとともにリフォームのエスアール事業部の立ち上げなどに関わってきましたが、長年に渡って待遇面に問題を感じていました。
当時、当社には評価と給与の制度がなく、さらに景気が悪くなってから日給月給制に変更したため、既存の従業員と新人の従業員に給与の差がありませんでした。採用の際の初任給を少し高めに設定しているとはいえ、数年経てば給与は変わりません。当然、従業員からは不満が出ます。しかも、労働時間が長く、帰宅は21時以降が日常茶飯事。残業代もなく賞与は寸志程度でした。
最大の問題は、そうした待遇への不満から入社2~3年目で退職する社員が続いていたことです。せっかく仲間になった人が辞めていくこと自体辛いことですが、さらに技術を覚えた人が辞めしてしまうのは会社にとって大きな損失です。当社の業務の多くは3年ほどかけてようやく一人前になる技術職ですから、新たな人材を採用しても即戦力とはいきません。教育には時間もコストもかかるため、売り上げにも影響がありました。
そこで、私が代表権を持った社長に就任した際には、財務体質を強化して従業員が納得する給与を支給できるようにしたいという想いがありました。そこで、評価と給与を制度化した人事制度の導入を考えた次第です。
3.従業員に説明できる人事制度に共感
―― 人事制度の導入に成長塾を選んだ理由をお聞かせください。
当社に合う人事制度がないか、知人や金融機関などに聞いて回りました。もちろん、すぐには見つかりませんでした。そんなとき、たまたまリフォームの同業で、成長塾を受講し人事制度を確立している会社の方と話す機会がありました。
成長塾の話を聞いて、腑に落ちました。成長塾なら、評価と給与を合わせ持った人事制度を実現できると確信めいたものがありました。とくに響いたのは「給与の不満がなくなります」「従業員に説明できます」というところ。私自身、説明できない今の状況を変えたい想いがありましたから、説明ができるという点に光が見えました。そこで、2011年4月に成長塾を受講させていただきました。
―― 受講後の率直な感想をお聞かせください。
受講の最中、正直「これは大変だ」と思いました。人事制度があって、それを変更していくことであればスムーズだったかもしれませんが、そもそも当社には評価制度も給与制度もありません。ゼロベースの状況でしたから、とにかく必死で受講しました。
そういう意味では「とりあえず、言われた通りにやってみよう」と開き直った部分がありました。あれこれ考えても仕方がありませんから、上手くいくかどうかは二の次。まずはしっかり学ぶことをだけを考えました。
4.人事制度の導入にほとんどの従業員が喜ぶ
―― 人事制度の導入に対して従業員の反応はいかがでしたか。
幹部にも成長塾を受講してもらい、2012年10月から仮運用を開始。本番運用は2013年4月からです。まずは理解してもらうのが大事だと考え、4つの拠点ごとに人事制度導入の話をしました。さらに、従業員一人一人には幹部が個別面談をして人事制度導入の話をしました。
それまで評価や給与の制度がなかったわけですから、一様に「やっとこういった制度ができるのか」と従業員はすんなり受け入れてくれました。実際、成長シートに当てはめて説明すると、かなりの給与アップが見込めることが分かり、すぐに張り切り出す従業員もいたほど。従業員みんなが「がんばります」と言ってくれたので、まだ早いとは思いながらも幹部と一緒に泣きそうになりました。今では懐かしい思い出です。
―― 成長シートづくりは苦労しましたか。
難しいというよりは、自分たちの仕事の棚卸しができたと感じています。「何をもって評価すべきか」という点でも、自分たちの考えを整理することできて良かったと思います。
もちろん、成長シートは従業員を評価する肝心要のところですから、運用していくなかで不備を感じたら、その都度改定しています。なお、従業員の評価とフィードバックは所長に任せていますが、私たちと同じ想いかどうか分からないところがあったため、ENTOENTOが開催するセミナーに参加させ、ベクトルを合わせるようにしました。これが良かったです。
5.会社の規模は売り上げも従業員数も約2倍に成長
―― 人事制度の導入後、どのような定量的効果を得ることができましたか。
2009年9月~2010年8月をBefore、2019年4月~2020年3月をAfterとし、成長塾受講前後を比較した定量的成果を以下に示しました。経営的な数字の部分はフルオープンではありませんが、売り上げと粗利益はすぐにオープンしました。
通常の賞与のほか、粗利益を決算賞与として従業員に還元することを伝えていましたから、すぐに「利益を出せば自分たちに帰ってくる」と理解したようです。それが以下の表が示すように、会社の成長につながっているのだと思います。
―― 売り上げは倍以上になっていますね。
社員数は39名から65名(※2021/7現在70名)になり、営業拠点は5から7(※2021/7現在9拠点)に増加。この10年で、従業員の成長とともに会社の規模は約2倍になっています。ちなみに2021年度3月の決算は9億円弱ぐらい。従業員の頑張りには本当に頭が下がります。
6.従業員は辞めずにずっと定着
―― 特に効果を感じているところはありますか。
前述しましたが、従業員が増えたことですね。以前はなかなか従業員が集まらなかったため、従業員一人にかかる負担が大きく、ずっと忙しい状況が続いていました。しかし、人事制度導入後は採用が順調で、中途から新卒まで年に平均3人は増えている計算。近年は年に5人ほど従業員が増えています。
何よりも大きな効果は、その従業員が辞めずにずっと定着していること。一致団結感が高まったと感じています。もちろん、残業時間も減って現在は1日1時間程度。有休もしっかり取れていますので、かなり働きやすい環境になったと思っています。
―― 定性的効果もお聞かせください。
会社の雰囲気が明るくなったと感じます。以前は従業員みんなが忙しいそうで話しかけにくい雰囲気。良い空気ではないので、取引先も呼べませんでした。今は取引先や経営者仲間が気軽に来られる雰囲気で、「エムエスさんに行くのが楽しみ」とおっしゃっていただけています。
7.エルダー制度を導入し、新人従業員のケアに注力
―― 人事制度の運用で工夫しているところはありますか。
運用のフィードバックは役職者に対しては幹部が、従業員に対しては営業所の所長が3か月に一度、年4回の面談を行っています。普段はゆっくり話す機会もないので、従業員とのコミュニケーションを深めるという意味で非常に重要な時間だと思って続けています。
また、3カ月に一度、私と幹部で人事制度全体を検証する成長支援会議を行っています。会議の楽しみは、部下の成長を楽しそうに語る幹部を見ること。「これがあるべき姿」だと非常に頼もしく感じています。
さらに、先輩の技術をしっかり伝承するため、5年ほど前から先輩が1年間、新人従業員の教育指導を行うエルダー制度を導入しました。これまでは「聞かれれば教える」程度でしたが、「教え方」や「技術の習得度合い」などを成長シートに盛り込み、制度化したことで技術の伝達が早くなったように感じます。言い換えれば、従業員間での情報共有が上手くできるようになったと考えています。
新人従業員側も技術を習得できるだけでなく、話を聞いてくれる人、身近に相談できる人がいるという点で安心感があるようです。今更ながらですが、新人従業員のサポートやケアは重要だと実感しています。
人事制度導入後は明るい雰囲気の社内に
―― 課題があればお聞かせください。
現在の課題は、上司が部下の重要業務を把握できていない点です。基本的に現場には一人で行きますから、上司が部下の仕事ぶりを見る機会が不足しているのが原因です。上司は、部下の仕事の邪魔をしてはいけないと思っているらしく、仕事現場に同行することをためらっているようなので「迷っているなら一緒に行きなさい」と指導しています。
この課題を解決するため、今年から同行を指導するポジションを設置。といっても、あくまでも教育目的ですから、業務意欲を阻害する可能性がある監査にはならないように注意を払っています。
8. 5年前から系列の国際ロジテックでも人事制度を運用
―― 系列企業の国際ロジテック株式会社にも人事制度を導入したと伺っています。
先代の父が1967年に創業した、国際ロジテック株式会社というトラック輸送を中心とした物流会社も経営しています。国際ロジテックにもエムエスで培った人事制度のノウハウを導入したいと思っていましたが、こちらの会社は従業員が400人以上いること、単純な運送業務だと加点が見込めないことから、しばらく導入は躊躇していました。
しかし、人事制度導入でエムエスの業績が大きく伸びたことを鑑みて、5年前から国際ロジテックでも人事制度を運用開始。思った通り、単純な運送業務の部門はまだまだ改善の余地がありますが、技術力や営業力が求められる部門にはピタリとはまり、しっかりと根付きつつあります。
上司が部下をほめる傾向が見えているので、良い方向に向かっていると思います。もう少し時間はかかると思いますが、成長シートをブラッシュアップしつつ、根気強く運用していきたいと考えています。
9.悩んでいるなら成長塾を受講すべし
―― 人事制度に悩んでいる企業に向けて、御社からアドバイスがあればお願いします。
経営者の悩みがゼロになることはないと思います。でも、成長塾の人事制度を運用していけば、自分の考え方を理解してくれる従業員は必ずいるはずです。理解してくれる従業員が少しずつ増えてくれば、悩みはどんどん解決に向かいます。
悩んでいても時間は過ぎるばかりです。それならまずは、成長塾の受講をおすすめします。
―― 最後に一言お願いします。
松本先生がおっしゃっていた言葉で、今でも覚えていることがあります。それは「経営者はこのままでいいと思うかもしれないけど、従業員はこのままではよくないですね」という言葉です。
この話を聞く前までは「会社の規模に拘らず、現状維持で経営できていればそれでよし」と思っていましたが、この考えだと従業員は10年後も20年後もあまり変わらない給与で働くことになります。従業員のことを考えたら、この考えは間違っていると松本先生の言葉で気付かされました。
今でもこの言葉をバイブルに、従業員のためにできることを第一に考えて会社を運営していくつもりです。松本先生にはこれからもご指導をお願いします。
株式会社エムエス様、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
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