株式会社丸忠様(リースキン事業、代理店事業、ハウスケア事業、トータルコーティング事業 沖縄県)
新たな人材を採用し育てて経営基盤から会社を再構築するため、成長塾で人事制度づくりを学ばれた株式会社丸忠 代表取締役 喜納 朝勝氏に、その経緯と効果について詳しく伺いました。
●会社プロフィール
社名 株式会社丸忠
所在地 〒901-2131 沖縄県浦添市牧港5丁目19-8
資本金 4,800万円
設立 1977年3月
従業員数 44名およびパート・アルバイト6名
事業内容
リースキン事業:家庭用、業務用ダストコントロール商品のレンタル
代理店事業:ダストコントロール商品の代理店さんへのリース
ハウスケア事業:法人・個人のハウスクリーニング全般、殺菌抗菌システム
トータルコーティング事業:新築の住宅のフロアコーティング“ミラーコート”、
水廻りのコーティング“クリスタルコート”、窓ガラスの断熱フィルムの施工など
URL https://kireimaru.jimdo.com/
1.沖縄全域に“キレイ”を届ける会社
― 丸忠の会社概要をお聞かせください。
当社は「沖縄をキレイにしたい」という想いを胸に1977年、軍関係の衣類クリーニングからスタートしました。現在のコア事業のひとつはオフィスや店舗、家庭のダスト・ホコリをコントロールし、清潔で快適な環境を提供するリースキン事業です。リースキンは全国に1,400拠点、全国ネットで“キレイ”を届けており、当社は地方本部として宮古・石垣・与論・沖永良部などの離島を含む沖縄全域に“キレイ”を届けています。
もうひとつのコア事業はハウスケア事業です。ハウスクリーニング、事務所クリーニング、トータルコーティング、カーペットのスチームクリーニングなど、オフィスや家庭を問わず、キレイに関するハウスケア事業を幅広く手掛けています。取引先は県内一流ホテルからレストラン、カフェ、店舗、オフィス、一般家庭などさまざま。定期的な訪問を通じ、その場を利用される方々により良い環境を提供しています。
近年はコロナ禍に疲弊する方々のお役に立てることはないかと思案し、新型コロナウイルス対策商品・サービスを扱い始めました。なかでも当社が沖縄の総代理店を務めている「Halo fogger(ハロフォガー)」は、医療機関において大きな反響を得ています。Halo foggerは機械による環境表面殺菌で室内空間を短時間で丸ごと殺菌する製品で、ヒューマンエラーを防ぐとともにウイルスや芽胞菌、薬剤耐性菌を99.9999%殺滅することができます。また、10μm以下の極小粒子(ドライミスト状)にして噴霧するため、医療機器への影響がありません。これにより、多くの医療機関で導入いただいております。
当社はこれからも沖縄のキレイを追求し続け、幸せな社会づくりへの貢献を目指し精進してまいります。
機械による環境表面殺菌で室内空間を短時間で丸ごと殺菌する
「Halo fogger(ハロフォガー)」
2.債務超過から脱却するための手段が人材育成
― 成長塾を受講したきっかけをお聞かせください。
債務超過の会社を立て直すには、人材育成と考えたのがきっかけです。そもそも丸忠で働くようになったのは、創業者の義父から事業承継の話を受けて帰沖したのが始まり。入社当初は会社全体を把握するため、営業の先頭に立って奮闘していました。ところがある日、会社の債務超過が発覚。義父とは話し合いを重ねましたが、結局は債務超過のまま事業承継することになり、2001年に丸忠の代表取締役に就任しました。
丸忠に入社して感じていたのは、キャリアの長い従業員の方が多く、会社を担っていく若手が育っていないこと。まじめで勤勉な従業員の方々でしたが、キャリアが長くなってくると現状維持で満足してしまい、実際に言動を見ていてもイエスマンになっていると感じていました。こうしたリソースの活力が不足している状況では、債務超過の経営状態を抜け出すのは困難です。かといって、経営を立て直すだけの資金はありませんでした。
代表取締役に就任して「何かできることはないか」とさんざん考えた結果、たどり着いたのが人材育成でした。実は事業承継後を見据え、代表取締役就任前から「沖縄県中小企業家同友会」に入会し、経営全般を少しずつ勉強していました。重要だと感じたのは会社の理念でしたが、理念を根付かせるには「採用と教育が鍵になる」と沖縄県中小企業家同友会所属の尊敬する経営者の方々から教わりました。私としても、本気で丸忠を立て直すには新たな人材を採用し育てて経営基盤から再構築するしかないと考えました。人材育成なら大きな投資をしなくても取り組むことができます。
― どのようにして人材育成を行うつもりだったのでしょうか。
リクルートを行えば人材を集めることはできますが、大事なのはその人材を育てる環境です。当初は人材育成に携わるプロのコンサルタントも考えましたが、前述したように潤沢な資金はありません。そもそも中小企業ですから、コンサルタントが策定するような大袈裟なものは合わないと思っていました。漠然と求めていたのは、従業員の働きを評価し成長を支援する中小企業に合った仕組みでした。
3.人事制度作成マニュアルを経て対面の成長塾を受講
― 成長塾を受講したきっかけをお聞かせください。
沖縄県中小企業家同友会の会報誌に掲載されていた、松本先生の人事制度作成マニュアルの広告を拝見し「これだ!」と思ってすぐに飛びつきました。最初は人事制度作成マニュアルを購入して、自分の手で人事制度をつくってみようとチャレンジしました。
ところが、私の理解不足もあり、人事制度作成マニュアルだけでは人事制度を完成させることができませんでした。これはまずい思い、どうにかして松本先生の人事制度を導入し運用できないか思案していました。そんなとき、松本先生から成長塾の開催案内を受けました。直接対面で教えてもらえば人事制度を運用できるかもしれないと考え、2005年に福岡で開催された成長塾に申し込み、受講させていただきました。
4.成長シートをもとにした面談を実施
― 人事制度はすぐに導入されたのでしょうか。
成長塾の受講後、およそ1年かけて成長シートを完成させ、人事制度をスタートさせました。といっても、成長塾が教える人事制度のすべてを始めたわけではありません。私も受講したばかりですから手探りの状態。まずはできるところからと考え、本人の自己評価と上司の評価を面談ですり合わせを行う仕組みの運用から始めました。
もちろん、成長シートをもとに評価を行うわけですが、やはり本人の評価と上司の評価は異なります。しかし、客観的に数値化された成長シートを見ながらお互いの意見を交換し合えるので、より良い仕事の仕方を一緒に模索することができます。それだけでなく、日頃の仕事のなかで困っていることやプライベートな部分までケアするなど、面談をコミュニケーションの場として機能させることができました。
松本先生は「慣れるまでは年に4回、慣れてきたら年2回」とおっしゃっていましたが、面談は従業員のモチベーションアップにつながっていると感じており、今でも年4回実施しています。私としては、この仕組みを運用することができただけでも非常に満足しています。
5.運用を始めて4~5年後から従業員の理解度が高まる
― 人事制度の導入で会社に変化はありましたか。
賃金制度などの導入を加えながら、この評価の仕組みを10年以上運用していますが、4~5年経ったころから変わり始めました。この頃には、賞与原資は全社粗利益で決定することをアナウンスしていましたから、いくら自分の部門が良くても他の部門が悪ければ原資が出ないことを従業員は理解したのだと思います。
従業員の理解度が高まったことを受け、会社としてもリースキン事業やハウスケア事業を部門ごとに縦割りにするのではなく、例えばリースキン担当の従業員でもハウスケアの営業ができるなど、部門を横断した活動を支援。中堅クラスの成長シートの重要業務には「全社を巻き込んで目標達成に向かわせている」を記載し、マルチプレーヤー重視の姿勢を明確にしました。
当社のような40名程度の会社では、なかなか一人一役というわけにはいきません。複数のポジションをこなしたほうが生産性向上につながりますから、それを成長シートに盛り込んだわけです。その意図を従業員は理解し、みんなで助け合いながら利益を上げていく仕事のスタイルへと徐々に変わっていきました。私としても、課題に掲げていた人材育成が正しいベクトルに向かっていると感じた時期でもありました。
6.債務超過からの脱却に成功
― 人事制度の導入後、どのような効果を得ることができましたか。
2008年7月~2009年6月をBefore、2019年7月~2020年6月をAfterとした、成長塾受講による人事制度導入の定量的成果を以下に示しました。前述したような運用により、導入当時のBeforeと10年続けたAfterを比較すると大きな効果が出ているのが分かると思います。もちろん、債務超過の経営状態からも脱却することができました。
7.体系的な人事制度を確立できつつある
― 成長シートは年々ブラッシュアップしていくという話をよく伺いますが、御社はいかがですか。
月日が経てば業務は変化し、考え方も変わってきますので、成長シートは部門長と相談しながら毎年ブラッシュアップしています。新人従業員に対しては、一般の従業員と同じ成長シートではハードルが高いため、新人従業員専用の成長シートを用意しています。さらに、新人従業員には人事制度の説明会を開催し、「成長シートの成長点数を伸ばすことが成長につながり、そして処遇も変わっていく」ことを説明。徐々にですが、体系的な人事制度を確立できつつあると感じています。
― 体系的な人材育成について詳しくお聞かせください。
松本先生もおっしゃっていましたが、この仕組みは会社に経営指針があることが大前提となります。つまり、会社の理念を基本として方向性、価値観、目標が明確になっていることを踏まえて人事制度を運用するわけです。ですから、当社もベースとなる経営指針書を作成しました。そして、この経営指針書を受け、どんな仕事をするのかを具体的に示したのが、個々の従業員に紐づく成長シートになります。こうした関係性をはっきりさせたからこそ、体系的な人事制度が確立できつつあると自負しています。
経営指針書には会社全体の経営的な数字もオープンになっており、利益目標を掲げた予算書も入っています。もちろん、その利益のうちの何パーセントが賞与になることも記載しています。実はこの経営指針書は、私一人で作成しているわけではありません。決算前の毎年5月、研修時に従業員全員が集って経営指針書をまとめています。
今期も従業員全員が集って経営指針書をまとめましたが、当初、私は「今年はコロナ禍を考慮し、売上目標は前年より下方設定した方の良いのでは」と提案。ところが従業員からは「前年と一緒で大丈夫」と驚きの返答がありました。実際、今期は新型コロナウイルスの影響もあってコア事業のリースキンは芳しくありませんが、その分を新型コロナウイルス対策商品・サービスがカバーし、ほぼ目標通りの売り上げを達成できています。このままいけば、今期は過去最高の売上高と利益が出る試算となります。
従業員の成長は嬉しい限りですが「こういうときこそ一致団結して頑張ろう」という機運は、決して私から発したわけではありません。「自分たちで決めて実行する、自分たちで検証する」という仕事への取り組み姿勢が、人事制度によって根付いたおかげだと思っています。
8.コミュニケーションの高め方を模索
― 一致団結できるということは社内でのコミュニケーションも活発なのでしょうか。
経営指針書や成長シートを通した価値観の共有が一致団結させているのだと思います。コミュニケーションという点では前述した面談のほか、朝礼や毎朝のリーダーミーティングなども重要なコミュニケーションの場だと思っています。
第三者が見れば、コミュニケーションが活発な会社だと思うかもしれませんが、我々はまだまだ足りないと感じています。一人ひとり置かれている状況や立場は違いますし、環境も目まぐるしく変わっていきますから、上手くいっている関係でも2週間後にはちょっとしたズレやすれ違いが起こる可能性は多々あります。コロナ禍ですから居酒屋で「飲みにケーション」できないのが残念です。とりあえず幹部に関しては私の自宅に定期的に集まってもらい、飲食しながら他愛もない話をしてコミュニケーションを高めています。もちろん、新型コロナウイルス対策は十分に行っています。
社員の家族も招待しての望年会は毎年大盛り上がりです
9.再受講で会社の成長にリンクする人材育成を認識
― 2015年にもう一度受講されていますが、その理由をお聞かせください。
幹部にも人事制度の全体像を理解してほしいと思い、私と幹部4名で成長塾を受講しました。私も一緒に受講したのは、もう一度勉強し直すことで新しい面が見えてくるかもしれないと考えたからです。
再受講して感じたのは、方向性に間違いがなかったことを確認できた点です。とりあえず、一安心しました。また、全体を通じて制度が洗練されてきたと感じました。私が2005年に受講した当時は、成長シートの成長要素がかなり細かったのですが、再受講したときはシンプルでかつ分かりやすくなっていました。実際に運用されている企業のフィードバックを得ながら「改良し続けてきた結果が反映されている」と感じました。
受講した幹部もより深く理解したはずですから、このまま成長塾の人事制度を運用していけば「会社の成長にリンクする人材育成ができる」と思っているでしょう。今度は、新たに誕生する部長にも成長塾を受講させる予定です。
10.まずは成長シートをつくることが大事
― 人事制度に悩んでいる企業に向けて、御社からアドバイスがあればお願いします。
「自社に合った成長シートを自社でつくる」ところがポイントです。経営者が諦めたら終わりですから、とにかく時間がかかっても成長シートをつくることが大事です。ちなみにですが、別のコンサルティング会社を入れて制度づくりを行っているところは、どの会社もあまり上手くいっていないようです。そういった話を聞くと、心の底から松本先生の人事制度を導入して良かったと思います。沖縄で成長塾の人事制度を導入している企業とは、「お互い切磋琢磨し頑張って行きましょう」と話をしています。
11.沖縄人材育成企業の認定を受ける
― 最後に一言お願いします。
当社は2018年に、沖縄県で50社ほどある沖縄人材育成企業に認定されました。沖縄県が主催する人材育成企業セミナーの受講や認証アンケートへの回答などを行い、基準点をクリアすると認定をいただけるのですが、これは当社の人事制度が評価された結果だと思っています。ここまでたどり着けたのは松本先生のおかげです。これからも、引き続きよろしくお願いします。
株式会社丸忠様、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
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