株式会社インハウス久永様(建材・住宅設備機器の卸売業/インテリアショップ/ホームセンター 鹿児島県)
成長シートを活用して、社員同士が教え合う風土を作り上げると共に、売り上げや粗利益を大きく向上させた株式会社インハウス久永の代表取締役社長 久永 祐司 氏に、成長塾での学びやその魅力について伺いました。
●会社プロフィール
社名 株式会社インハウス久永
所在地 〒891-0123 鹿児島市卸本町8-16
設立 1953年(創業 1858年(安政5年))
社員数 65名
事業内容 建材・住宅設備機器の卸売業/インテリアショップ/ホームセンター
URL https://www.inhouse-hisanaga.jp
1.建材や住宅設備機器を取り扱っている江戸時代創業の老舗商社
――インハウス久永の会社概要をお聞かせください。
インハウス久永は、内装仕上げ材を中心とした「建材」「住宅設備機器」を取り扱っている商社です。鹿児島県にある本社の他、九州各地に営業拠点を持ち、主に内装屋さんや畳屋さん、リフォーム店さんに、商品の卸売りを行っています。
また卸売業の他にも、鹿児島県内に2店舗のインテリアショップ「インハウス久永with LIVING HOUSE」と、鹿児島県と宮崎県にそれぞれ1店舗ずつあるホームセンター「現金問屋ダイコク」を運営しており、こちらでは一般消費者の方々に向けた販売も行っています。
創業は1858年で、元々は襖や掛け軸を作る「表具師(ひょうぐし)」と呼ばれる職人からスタートしました。その後、大正時代に襖の材料の卸売業をスタート。また戦後からは、日本の生活様式の変化に合わせて、壁紙やカーテン、絨毯など洋風の室内装飾なども取り扱うようになり、少しずつ事業を拡げていった形です。
インテリアショップである「インハウス久永 with LIVINGHOUSE」は、鹿児島県最大の繁華街・天文館(写真左)と、200店舗以上が軒を並べるイオンモール鹿児島店(写真右)にそれぞれ所在。
2.社員の成長と定着率アップを期待して成長塾を受講
――成長塾を受講した背景をお聞かせください。
弊社では約10年前まで、社労士さんの指導の下、「職能資格制度」に基づく人事評価制度を導入していました。しかしその制度では、なかなか社員が上手く育ってくれず、また退職してしまう人が多かったことから、人事制度の刷新を検討するようになりました。
そんな折、顧問税理士さんから紹介されたのが成長塾でした。「共に成長する」という理念を掲げている弊社なら、成長塾で学べる人事制度が向いているのではないかと考えて、紹介してくださいました。
そこでまずはセミナーを受講して、松本先生のお話を聞いてみることにしました。
そして「社員同士がお互いに育て合う」ことが大切だというお話を伺い、確かに松本先生の考えは弊社の理念にもピッタリ合うと思い、受講することを決めました。
3.人事制度導入・運用・浸透のために行った工夫とは
――人事制度の導入や運用、また社員へ浸透させていくにあたって、工夫した点などあれば教えてください。
それぞれの過程で工夫した点は次の通りです。
●導入:社員へのヒアリング
成長塾で学んだ成長シートの特徴は、優れた社員の優れたやり方を可視化、共有化して全社員を優秀な社員に育てていくものです。
導入にあたってまずは、私自身が全職種の仕事を理解するために、各職種の社員にヒアリングをしていきました。営業ひとつ取っても複数の職種があるので、膨大な時間が掛かりましたが、その分、成長シートに記載すべき要素が整理出来ました。
●運用:日々のブラッシュアップ
ヒアリングの結果、一定のレベルの成長シートは完成した訳ですが、それで100点となる訳ではありません。完璧な成長シートは存在しないと思っていますし、時代と共に評価すべき点は変化していくと思っています。そのため弊社では、毎月のリーダー会議で必ず部下の優れたやり方を発表、共有化を図り、成長シートに落とし込んでいく作業を行っています。
そのため弊社の成長シートは、場合によっては3ヶ月単位でブラッシュアップしています。
●浸透:繰り返し説明する
成長シートの運用を始めた当初は、多くの社員から反発がありました。この成長シートはうちの部署に不平等だとか、要素が多すぎるとか、いろいろ言われました。しかしその度に繰り返し、評価する点の説明をしたり、成長シートの目的や意義を伝え続けていたところ、少しずつですが理解してくれる社員が増えてきました。
また同時に成長シートによって自分たちの成長を実感したり、実際に成果が出てきたことで、最終的には皆、前向きに取り組んでくれるようになりました。
4.社員の成長によって売り上げが6億円アップ
――人事制度導入後の定量的効果をお聞かせください。
2012年7月~2013年6月をBefore、2021年7月~2022年6月をAfterとし、成長塾受講前後を比較した定量的成果を以下に示しました。またこれらの数値に加えて、部署ごとの売り上げや経費などはすべて公開して、社員にも共有しています。
※クリックで拡大
導入から10年で、売り上げは約6億円、粗利益は約1億4000万円伸びました。その要因は、やはり社員の成長です。成長シートで社員が成長してくれたことが、こうした伸びに繋がっていると感じています。
また2012年当初は正確な数字を測っていないものの、概算で人時生産性は1000円以上アップ。また離職率も二桁代だったのが5%以下になったり、生産性の向上により残業代もゆるやかながら減少傾向にあったりと、様々な部分で効果を実感しています。
5.社内の風土や新卒採用にも好影響
――その他、数値化できない定性的な効果としては、どんなものがありましたか?
定性的効果としては、次のふたつが挙げられます。
●社員同士が教え合う風土になった
弊社は営業会社ですから、かつての人事評価や給与決定は、どちらかと言えば営業の成果だけを見ていました。そのため社員同士が教え合うという考え方そのものが、存在していませんでした。
しかし成長シートの特徴は、優れたやり方を可視化し、それを共有化したうえで、「惜しまずに優れたやり方を教えた社員」を一番評価するものです。評価する点がガラリと変わったこと、またそれを徹底することで、社内には社員同士がお互いに教え合い、育て合う風土ができあがりました。これは大きな変化だと感じています。
また社員同士のコミュニケーションが活発になったことで、上司や部下、部署同士といった縦と横の人間関係も非常に良好になりました。
●新卒採用時の応募動機に繋がった
弊社の人事制度が、学生さんたちの応募動機に繋がってくれたことも、導入効果のひとつです。
具体的には、新卒採用の会社説明会や面接で、人事制度、成長シートの説明をするようにしたところ、学生さんたちから非常に好評を得たのです。努力をすれば評価され成長できる点、またどんなスキルを身に付ければステップアップできるかが明確な点などが、学生さんたちにとっては分かりやすかったようです。
また、そうした説明を受けて入社した学生さんたちは、成長シートにとても期待してくれています。人事制度を非常に前向きに受け入れてくれたメリットもありました。
6.「自分の中に答えがある」というアドバイスの真意
――「成長塾」を受講して感じた率直な感想をお聞かせください。
松本先生のお話を直接伺える点が、非常に良かったと感じています。
大学教授やコンサルタントなど、人事制度を教えてくれる人は世の中にたくさんいます。しかしそういう人たちの話は、綺麗にまとまってはいるものの、あくまで机の上だけの話で実践が伴っていません。
その点、松本先生が提唱する人事制度は、ご自身でしっかりした体験や実践を経て、その成功事例をベースに仕組み化されています。そのため言葉には非常に説得力がありますし、信頼できます。
――なにか印象に残っている言葉はありますか?
「あなたの中に答えはあります」という言葉ですね。松本先生になにか相談すると、アドバイスと共に、この言葉をくださいます。
これは一見、突き放しているような言葉に聞こえますが、決してそんなことはありません。人事制度や成長シートの方向性は結局、経営者の考えが一番正しいということ。つまり自分の中に答えを持っていることを教えてくれている言葉なのです。
「必ずこうしなさい」という決まりや一般論に捕らわれる必要ないと気づかされたのは、とてもありがたかったですね。
――久永社長にとって成長塾はどんな存在だと言えますか?
私の経営哲学を人事に落とし込むにあたって、要素を絞り込む「フィルター」であり、形にしていくための「型」のような存在です。
私は成長塾の他にも、ENTOENTOさんが主催されているセミナーを幾度か受講しています。その度に関心するのが、人事のトレンドにもしっかり対応されているという点です。「社員を成長させる」という軸はブレずに、しっかり時代と共に変化・成長を続けて、それを受講者に伝えてくださるので、いつも本当に助かっています。
7.社長や役員クラスが自ら動くことが学びを活かすコツ
――既に10年近く実践を続けている立場として、成長塾の学びを活かすためのコツがあれば教えてください。
成長シートを最初に作るのは、社長や役員クラスといった、会社全体を理解している公平な人にすることをオススメします。
リーダークラスの人に任せると、どうしても自分の部署に有利な発想、自分の立場からの目線で作ってしまいます。私も導入当初、一度部下に作成を任せてみたことがあります。そうしたところ、成長シートの項目に「部下が自分の言うことを聞くかどうか」という、成長とは関係ない項目を作ってきて、大変驚きました。
人事制度の運用がスムーズに進み、みんなが社長の考えを理解できるようになった後は、リーダーに任せても良いですが、そうなるまでは会社全体を見渡せるトップクラスの人間でないと、分からないことがあるようですね。
8.会社の成長のためには「社長の分身」を増やすことが必須
――今後の展望をお聞かせください。
弊社は、今年の3月にふたつの会社をM&Aしまして、今は3つの会社を運営しています。その3社の合計売り上げ36億円を、将来的に100億円にしようと頑張っています。
またM&Aしたことによって、社内の業種や部門が増えました。それを活かして、もっと社内の人材交流を盛んにしつつ、いろんなキャリアを積んでいける仕組みを作ることも目指しています。
そうした目標の達成のためには、いろんな判断を自ら下せる幹部社員……いわば「私の分身」をもっと増やすことが大切だと考えています。
もちろん社内でも中堅階層、管理階層の育成には注力していますが、社外の人から教えを聞くことで、より吸収しやすくなると思うので、ENTOENTOさんには、リーダー格の人をもっと育てていくためのセミナーを開催したり、そのための指針をいただけることを期待しています。
本社で撮影した社員との集合写真。人事制度を導入し、密なコミュニケーションを重ねたことで、社員同士はもちろん、社長と社員との関係性もより良好なものへと変化しました。
株式会社インハウス久永様、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
※株式会社インハウス久永様のホームページ(https://www.inhouse-hisanaga.jp)
※取材2022年11月
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