株式会社群協製作所様(製造業 群馬県)
レーザーノズルとブラックレンズの販売では業界で有名な群馬県の株式会社群協製作所は、町工場ならではの古い慣習を見直したところ、社員の勤務態度が改善し、その上業績がアップしている。
代表取締役の遠山 昇氏に詳しいお話をお聞きした。
1.群協製作所の概要
2.成果を上げるよりもすごい技術を身につけるよりも勤務態度を守れる社員になってほしい
3.年功序列の評価は矛盾だらけ
4.初めて成長制度を導入するにあたっての社内の反応
5.群協製作所の成長制度とは
6.成長塾の成長制度の導入効果
7.相手が生身の人間だから、成長制度は真剣にやると面白い
8.成長制度を導入しようと考える経営者へのアドバイス
9.今後の期待
1.群協製作所の概要
― 群協製作所についてご紹介ください。
群協製作所(以下群協)は、群馬県で、銅管継手、レーザーノズルやブラックレンズなどの消耗品の販売、業務用粉塵フィルター洗浄の環境ビジネスと3本柱で事業展開しています。
従業員は営業部と製造部と合わせて40名です。
2.成果を上げるよりもすごい技術を身につけるよりも勤務態度を守れる社員になってほしい
― 群協製作所が、成長制度を導入するまでの経緯をお聞かせください。
勤務態度が良くない社員のいない会社にしようと思ったのがきっかけです。
勤務態度がお世辞にも良いとは言えない社員がいました。本人はほとんど自覚がなかったと思います。
私用メール、携帯電話で話をする、ガムを噛む、くわえタバコ、口笛を吹くなんていうのは日常茶飯事。社員同士のケンカもあれば、下着姿で仕事をする者もいました。工場に禁止事項の張り紙をしても、見る者はなく、当時は効果がありませんでした。
他の会社の見本になるようなすばらしい会社にしようとは高望みしませんが、社員が守るべきことを守れる会社にできないかと思っていました。
― そのような職場環境がつくられた原因は、どこにありましたか。
町工場には共通することですが、義理人情や年功序列での評価や給料を決めるという慣習があったことです。
「職人だからいいものを作れば、何をやってもいい」というような暗黙のルールがありました。
3.年功序列の評価は矛盾だらけ
― 職場の環境を改善するためには、具体的に、どのような仕組みが必要だと考えましたか。
まずは古い町工場の慣習を変える必要があると思いました。年功序列の給料は、公務員ならいいかもしれませんが町工場では通用しません。勤続給、年齢給の割合が高いようでは評価と矛盾していて正しく給料が決められないと思いました。
― どのような矛盾点があったのですか。
たとえば、若い上司の給料よりも年上の部下が高い、という給料の逆転現象も一部にありました。若い社員は、コンピューターつきの操作が難しい機械もすぐ覚えます。しかし、古参の社員は新しい機械が扱えなくても給料は下がることがないので、新しい技術を覚えようとしません。こういったことは製造業では致命傷になります。世間の技術革新に会社組織が追いついていけなければ、企業間の厳しい生存競争に生き残ることはできません。
4.初めて成長制度を導入するにあたっての社内の反応
― 初めて成長制度を導入するにあたって群協製作所の社内の反応はいかがでしたか。
社員から猛反対にあいました。先代の父にも反対されました。
成長制度をつくり評価を見直したところ、能力に対して給料があわず、減給の対象となる社員が数名でたからです。
成長塾ではこの減給相当額のことを調整給と言います。
成長塾では、調整給の見直しまで半年以上チャレンジ期間をおくよう説明されます。しかし、1人の社員については幹部で、もっとも勤務態度が悪かったので厳しく指導しました。どうしても良くなって欲しかったからです。それ以外の調整給の発生した3人の社員も伝えたところ、なかなか分かってもらえませんでした。
彼らの上司も呼んで一緒に話し合いました。彼らは「この成長制度はすばらしい。技術力が上がるに従って給料が上がるのは、若い人やヤル気のある人にはいいだろう」と分かってくれますが、ただ自分の給料が下がることは納得してくれませんでした。私は「評価=給料」、「給料=評価」と1時間半ほど説明しましたが、時間切れで納得してもらえませんでした。
― その後、どのように納得してもらったのですか。
厳しく指導した1人の幹部は辞めてしまいました。彼は芸術的な技術を持つ天才肌の職人でした。なぜそれほど高い技術力を持つ職人の評価が低いのかというと、一般職層の成長シートの全体の4割が勤務態度の評価にウェートをおいているからです。
天才肌の職人は、勤務態度がとても悪かったのですが、技術を持っているために、今まで誰も彼を指導することができなかったのです。彼はこの処遇に対して非常に怒りました。しかし彼は「勤務態度を改善することができない」と辞めてしまいました。
― 天才肌の職人が辞めてしまって、業務に影響はありませんでしたか。
正直、「辞める」と言われて困るというのはありました。そんな時、松本先生から2・6・2の組織原則を教えていただきました。2・6・2の原則とは、社員全体の中の2割が優秀、6割が普通、残りの2割りは成長していない社員という比率のことです。
「優秀な2割がいなくなれば、普通の6割から優秀になる人が育ってくる」と松本先生からアドバイスいただき、まったくそのとおりになりました。
成長塾では「勤務態度が悪いときは上位の社員から指導しなさい」と言っています。上の立場の人間と話をつけるのが解決するポイントです。まったくこれと同じでした。
勤務態度の悪い幹部が辞めたので、みんなルールを守るようになりました。
残った人も何回も時間をつくって話し合いをしたので、徐々に納得してもらえたと思っています。
― 先代も最初は賛成されていなかったようですが。
「俺がここまでやってきたんだ。間違いはない」と先代もプライドがありました。先代とも社員と同じように時間をつくり、何回も話合いました。
私が作った成長制度は先代のやってきたことを尊重するもので、否定するものではありません。群協も40年続いている会社ですから、先代が大切にしてきたものや、人との繋がりは継承しています。そのこともだんだんわかってくれて先代も心を開いてくれました。
実は先代の反対には理由がありました。給料を下げることがいかに大変かを知っていたので、心配していたのです。以前不景気で資金繰りが間に合わず、全員の給料を下げたことがあったからです。
この成長制度は根拠のある給料の決め方をしているので、先代も安心してくれました。もっともこの成長制度は給料を下げるためのものではなく、社員を成長させ、給料を上げるために導入しました。
5.群協製作所の成長制度とは
― 群協製作所の成長制度について、詳しく教えてください。
群協では、成長塾で学んだ「成長シート」を活用しています。
「成長シート」は経営者が優秀な社員をモデルに作成し、社員が目指す道を、成果、勤務態度、知識・技術、重要業務という項目に分け、それぞれ「何をどのようにすればいいか」具体的に示しています。
「成長シート」は点数で評価します。ウェートが高いほど重要度が明確になっているので、社員は何をしたらいいのか明確になります。
このシートには上司の評価も書き込みます。社員は自分で評価し、上司の評価をうけることで、自分の成長を確認することができます。
「成長シート」で評価をすることで、経営者や上司は、部下に具体的な指導が継続的にできます。
●群協製作所の成長シート
・勤務態度(朝掃除、規律性、協調性)の評価が全体の4割を占めています。
・営業部は専門知識のウェートが高くなります。
・製造部の技術習得は、10種類以上ある機械の操作技術を1台1台評価し、使う頻度の高い機械や扱うのが難しい機械はウェートが高くなります。
6.成長塾の成長制度の導入効果
― 成長塾の成長制度の導入効果をお聞かせください。
一番の効果は社員の勤務態度が良くなり、良い組織風土の会社になったことです。
さらにありがたいことに、この不況下、業界全体が50%も業績ダウンしているなか群協は少しずつですが確実に基礎体力が向上しています。消耗品は景気のバロメーターのようなもので、最初に不況の影響を受けます
ライバル会社が戦意消失している中、営業部では毎月平均25件、新規顧客を獲得してきます。私自身も驚いています。
製造部では今まで新しい技術を学ぶことは、一部の社員しかしていませんでした。今では技術習得率が、半年で1人あたり平均5%上がりました。過去にはありえないことです。
このままいけば今期の業績は昨年対比で15~20%アップは間違いないでしょう。
― このような効果を生み出した理由はなんですか。
成長制度によって社員の勤務態度がよくなったことと、社員が会社の方針や重要業務を理解し、それぞれ自分のやるべき事を遂行していることです。
松本先生が「社員が成長するには、守るべき勤務態度を遵守し、業務を遂行するための知識、技術を習得し、成果を上げるための重要業務が継続できること」とおっしゃっていた通りになりました。
成長制度により社員は勤務態度がよくなり、会社の業績はアップしました。
7.相手が生身の人間だから、成長制度は真剣にやると面白い
― 成長塾を受講して印象に残ったことはなんですか。
成長制度づくりを真剣にやると面白いと思いました。相手が生身の人間だから、泣いたり、怒ったり、喜んだりして最後に納得する。
今の会社の状態をいうと、女性の営業が主力となって稼ぎ、社員が将来を信じて一生懸命勉強しているというとこですかね(笑)
成長制度導入後、具体的に印象に残ったことは社員が仕事の満足感をもっていることと、会社がきれいになり社外の評価をもらったことでです。
「社員が仕事に満足感をもっている」
女性の営業たちが「仕事はお金ではなく満足」と言ってくれました。私自身、社員の成長は感じていましたが、そこまで仕事にやりがいや満足感をもっていたことをとても嬉しく思いました。彼女たちは取引先の社長さんから、営業しなくても「いつものアレちょうだい」と注文が入るくらい信頼されています。
「社員の勤務態度がよくなり、会社がきれいになった」
勤務態度が良くなった事で会社がとてもきれいになりました。社内の評価だけでなく、業者さんからは「ずいぶんきれいになったね」と言われます。
ダスキンや電気の検針のおばちゃんからも「群協さんのトイレはいつ来てもきれいだし、社員さんもよく挨拶してくれますね」と言っていただきすごく嬉しいですね。彼女たちはトイレ休憩が群協でできるようスケジュールを組んでいるそうです(笑)
8.成長制度を導入しようと考える経営者へのアドバイス
― 成長制度を導入しようと考える経営者へのアドバイスをお願いいたします。
最初は欲張らず、会社の考え、価値観を成長シートに落とし込むことですね。
「成長シート」の見本を見るとすばらしいので、あれもしたい、これもしたいと思います。私も最初は、責任感、積極性、使命感などもシートの項目に入れたいと思いました。でも冷静になって、私が社員に求めているものは何か考えてみると、ケンカしないでルールを守る、朝みんなで掃除することなんです。
経営者が求めている社員像を、背伸びしたり欲張らずに「成長シート」に落とし込むことです。
社員は急に優等生にはなりませんから、時間をかけてゆっくりと向き合ってください。時間をかければ社員は成長します。
私の夢は、10年後には技術と勤務態度の両方が優秀な社員が大勢うちの会社に揃うことです。そうなればどんな大不況がやってこようが絶対に会社は倒れません。
群協は成長途中の社員がたくさんいたから時間がかかりましたが、やりがいがありました。私どものようにこれから成長する社員がたくさんいる会社はやりがいがありますよ。町工場にはこの成長塾の成長制度はいいと思います。
9.今後の期待
― 成長塾への今後の期待をお聞かせください。
成長塾の成長制度は奥が深いのがよくわかりました。、松本先生も今の状態に100%満足していないと思います。これからもっといい情報が出てくると思いますので、ぜひ教えていただきたいです。
群協の社員は素晴らしい社員になりました。これからはもっと成長して大きな夢を描ける会社にすることが目標なので、松本先生これからもよろしくお願いします。
株式会社群協製作所様、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
※ 株式会社群協製作所様のホームページ
※ 取材日時 2009年9月
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