株式会社インパム様(シール、ラベル、企画印刷 岡山県)
2018-06-25 [記事URL]
株式会社インパムは、成長塾を3度受講しました。予定している次の人事では、次期社長候補、役員は生え抜きが多くなり、後継者の育成に成功しています。代表取締役・岩田冨士夫氏にお話を伺いました。
1.インパムグループについて
2.ステップアップシートについて
3.上手くいかなかった大手コンサルトの関係
4.成長塾との出会い
5.人を育てるために分社化
6.こんな会社を目指しています
7.このインタビュー記事を読んでいる経営者様へのメッセージ
1.インパムグループについて
- インパムの業務内容を教えてください。
シールやラベル、ステッカーを主とした印刷物全般の企画、デザイン、印刷までをトータルに行う会社です。
商品の用途は、「目を惹くデザインで販売促進を行う」、「機械に貼り安全注意を促す」、「食品や酒類における商品名の告知」、などであり、その他にも、お客様の要望に応じた商品を生産しております。
創業は1950年(昭和25年)。今年で創業63年目になり、現社長の私は二代目になります。
現在、株式会社インパム本社(管理、営業)、株式会社インパムシール(生産)、株式会社インパムクリエイト(デザイン)の三社で業務を行っています。この体制を取っている理由は、職種ごとに異なる人事管理に対応するためです。
※シール、ラベル、フィルム包装材の多品種、小ロット印刷を強みとしている。
オリジナルノベルティなども、作成することが可能。
2.ステップアップシートについて
- 成長塾で学んだ内容を教えてください。
社員を評価する項目を、大きく四つに分類し、「目に見える形」にすることです。
項目はそれぞれ、「期待成果(の実現度)」「重要業務(の遂行度)」「知識・技術(の習得度)」「勤務態度(の遵守度)」になります。
このような「可視化」を行うことにより、社員の目標も明確になり、お互いに教え合う習慣が身につき、ひいては、会社の業績も向上します。
※社員の目標を明確にする上で、ステップアップシートは必須のツールである。
成長塾で学んだ内容を実務で行うために、この「ステップアップシート」を使用します。まず社員が自らの点数をつけ、直属の上司が評点をつけた上で、その評点に問題がないかどうか、各評価者が一同に集まる「成長支援会議」にて評価のすり合わせ、最終決定を行います。
このシートを作った一番の目的は、社員一人一人の成長を支援することです。詳しいことは、後でお話ししますが、今までであれば習得に一年かかっていた業務を、半年の期間に短縮できたなどの実績をあげています。
あわせて、給料を算定する基礎になっています。
3.上手くいかなかった、大手コンサルタント会社との関係
- 社長が人事評価の制度化に、関心を持つようになった経緯を教えてください。
1999年(平成11年)私は先代である父の後を引き継ぎ、社長になりました。当時、私は50歳でした。
就任後、一泊の社員研修なども行いながら、スタッフ全員で議論しました。テーマは、「21世紀に向けて、どんな会社を作っていくのか」でした。
出た答えは、時代の変化に対応できる会社になるということです。まず、印刷技術の面からいうと、21世紀はアナログからデジタルへ、完全に切り替わることが予想されました。作業の標準化、マニュアル化を進めていき、職人的な勘と経験で進めて行く部分をなくしていこう、ということになりました。
さらに、少子高齢化に伴い、消費者の行動も変わっていくに違いないと考えました。ニーズをつかむための情報収集力、あわせてデザイン力も磨いていくという結論を得ました。
- 改革を実現するために行った、取り組みを教えてください。
いくつかのコンサル会社と契約し、社員をセミナーに参加させ、個別の相談にも乗ってもらいました。
その中には、業界で大手と呼ばれるコンサル会社もありました。しかし、残念ながら、思うような成果が上がらなかったため、しばらくして中止しました。
- 何がいけなかったのでしょうか。
「実体験に乏しい人が、指導をしている」というのが、一番の理由です。どの会社のアドバイスも、当社に応用が利くものではなく、何かの本から引っ張ってきたような話ばかりでした。どのような人事制度を作るのかも含め、ヒントを得ることはできませんした。
4.成長塾との出会い
- 成長塾を知ったきっかけを教えてください。
パンフレットで見たのがきっかけです。松本先生の経歴、成果だけで社員を評価しないという、ユニークな視点に興味を覚えたので参加しました。
成長塾に参加して感じたことですが松本先生は、今までのコンサルとは違うというのが、率直な思いでした。かつての勤務先「魚力(うおりき)」で人事担当の幹部として活躍し、同社を東証二部に上場する会社に導いた実績。体験に基づいた事例の引用。そして、気づきを与えてくれる質問。いずれも現実的な話で、当社から見ても、大いに参考になりました。
当社は、成長塾に計三回参加しました。その理由は、スタッフ全員に内容を周知徹底させ、実務に反映させるためには、時間を掛けて取り組んだ方がいいと思ったからです。最初は、役員二名と行きました。二回目以降は管理部長など、人事の実務を行う人間も同席するようにしました。
- 新たな人事制度の導入に対する、社員の反応はどうでしたか。
特に反発などはありませんでした。ステップアップシートを半年に一回実施、三ヶ月に一回は個人面談を実施しており、直属の上司と社員がステップアップシートをもとにして、次に成長するためには、どういった所を重点的に行うか、といったことを話しています。ステップアップシートの項目ができるようになることで、求められている成果を出すことのできる「人財」に成長することが 可能となり、上司も指導しやすく、社員本人も何をすべきか、ということが明確になります。
今後の課題は、社員を評価する中間管理職のレベルアップを計ることです。ステップアップシートの点数を判定する基準が、人によって異なることもあります。しかし、私が指摘したことに関しては、どの責任者も真摯に受け止めてくれております。人事制度の構築には終わりはないと、松本先生も言われていますが、その通りだと感じます。
5.人を育てるために分社化
- 先ほど、人事管理を目的とした、分社化という話を伺いました。その理由ならびに、インパム本社と、関連二社の関係について伺います。
分社化した理由は、その方が成長塾で学んだ人事管理を行いやすいからです。なぜなら、この三社は業務の内容が異なるからです。
三社の関係は対等です。対外的には、法人格が異なっても、「インパム」という一つのブランドで、業務を行っております。
【株式会社インパム(本社機能・管理・営業)】
本社における、経理・総務などの管理、営業を行うのが同社の仕事です。
かつては、当社の営業も成果主義を取り入れていました。方針を転換し、売上だけではなく、仕事の内容、情報の収集力、そして、勤務態度などで評価するようにしました。
ただやはり、営業パーソンとして成功するためには、地道な努力も大切な反面、本人が持って生まれたセンスが影響します。営業だけではなく、全部署において適性を判断した上で、部署間異動を推進しており、異動によって新たな立場で活躍している社員も多くおります。
【株式会社インパムシール(生産)】
シールやラベル、ステッカーの印刷物を、工場で生産するのが、同社の仕事です。
「見て覚える」方法は、一つの仕事を習得するにしても、時間がかかります。その間も多大な人件費を必要とします。
成長塾で学んだ解決方法の一つに、「教えあう」ことで、全体のレベルアップをはかるという考え方があります。ノウハウを共有することは、独学よりも成長の度合いが早く、組織としての連帯意識も高めることができました。
昔に比べれば、機械の操作も自動化されてきましたが、経験と勘で行う工程も残っています。例えば、微妙な色合いを出すために、コンピューターで濃度を算出したあとに、インクを目分量で追加することがあります。
そういった、職人技といえるような業務において、「教える」人が評価される項目を、ステップアップシートに追加したことにより、技術の習熟のスピードが速まりました。
【株式会社インパムクリエイト(デザイン)】
お客様のご要望をお伺いし、絵柄や色、紙の形などをデザインするのが、同社の仕事です。
デザイナーのほとんどは女性です。結婚を機に退職する社員もおりますが、その後、復職する社員もおります。
デザインは自由度の高い仕事です。お客様の持つイメージを形にするためには、細やかな感性が必要になります。
クリエイティブな仕事に集中してもらうためには、働きやすい職場環境を作ることが大切です。デザイン部門においては、この視点に立って、ステップアップシートを運用しています。
6.こんな会社を目指しています
- 成長塾を受講して得た、一番大きな収穫は何でしょうか。
後を任せられる「人財」が、多く育ったことです。私は現在64歳ですが、かねてより、元気なうちに、会社の運営をバトンタッチしたいと思っていました。私が考えている次の社長や役員クラスは、新卒で入社した生え抜きの社員が多くなりました。彼らを一から成長させることができる会社であることを、嬉しく思っています。
- 新卒の研修において、インパムが独自に行っていることがあれば、教えてください。
「両親の足を洗う」ということを体験しています。そして、体験してどのように感じたか、という体験記を残しています。珍しい取り組みだと思われるかもしれませんが、感謝の心を持ち、相手のことを思いやるには、一番身近な両親との関わり方を見つめ直すのが一番です。
課題を与えると、社員は皆一様に驚きます。そして、照れくさがりながらも足を洗い、レポートを書きます。例えば、こんな文章があります。
「足を洗っている時に、会話はありませんでした。しかし、気まずい雰囲気もなく、むしろ心地よい時間に感じられたのが深く印象に残っています。それは、肌と肌が触れていることで、自然とコミュニケーションが成立していたためなのかもしれません」
このように社員は、研修を通して、何らかの気づきを得ています。
- インパムとして、これから取り組む課題があれば教えてください。
現在、インパムではSOHO(Small Office Home Office 自宅勤務)のスタッフが数名在籍しております。さらに、その人数を増やしていきたいと考えています。
「ワークライフバランス」という言葉がありますが、今は昔のように、仕事と家庭のいずれかを犠牲にする時代ではありません。当社は”心豊かに暮らす・働く・生きる”というキーワードをスタッフ全員で共有し、時代に即した職場の環境作りを行っております。
インパムは、岡山県が本社の会社ですが、SOHOの拠点を全国に増やすことにより、支店を開設する手法とはまた違った形での営業展開もできると考えております。
「企業は人なり」これは私の好きな言葉です。SOHOの推進も含めて、インパムは今後とも「人財」の育成に力を入れてまいります。そのために、ステップアップシートを活用し、より社会に貢献できる企業に成長してまいりたいと思います。
7.このインタビュー記事を読んでいる経営者へのメッセージ
- 人事評価の構築を検討している、社長へのアドバイスをお願いします。
成長塾には「社長一人で」参加しないことです。自分の右腕といえる幹部役員、さらには、今後、人事管理の実務を行う社員を伴うことをお勧めします。
共に成長塾に参加した他社の例ですが、社内からの反対が原因で、新しい人事制度の導入に、数年かかったことを知っています。
経営者の思いやビジョンを共有できる人を、まずは一人育てることが大切です。当社が成長塾に役員を最初から参加させたのはよかったと思っています。
インパム様、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
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※ 取材日時 2013年