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第70話 全ての社員を優秀にする簡単な方法

2021-06-22 [記事URL]

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成長シートは優秀な社員をモデルにして作成します。

全ての社員は優秀になりたいと思っていますが、どうすれば優秀になれるか、通常は社内で明確になっていません。モデルにした優秀な社員でさえ、成長シートを見て初めて自分が優秀だと評価されている内容を知ります。

優秀な社員はどうして優秀になれたのか。それは基本的に性格が素直だからといえるでしょう。せっかく上司が指導しても、自分には自分のやり方があるといって聞き入れない社員は、なかなか優秀になることはありません。もっとも、絶対に優秀にならないという意味ではなく、例えば素直に学べば1年しかかからないところを3年かけるといった違いがあるだけです。

優秀な社員は様々なことを早く学ぼうとします。その手段として一番多いのは書籍を読むことでしょう。また、社内の勉強会にも積極的に参加するでしょう。一から学ぶよりも他者から学ぶ方が何倍も早く自分が優秀になれることを、優秀な社員は理解しているからです。もっとも、優秀になりたいという意欲が誰よりも高いことも理由の1つでしょう。

では、我が社の社員を全員優秀にするためにはどうしたらよいでしょうか。基本的に社員は全員優秀になりたいと思っているでしょう。
上司が部下を優秀になったと認めるのは、その部下が高い成果を上げたときです。「成果が全く上がっていないが、やることはやっていて優秀だ」と褒めることは、企業経営においてはまずありません。優秀だと評価するのは高い成果を上げていることが前提です。

では、その高い成果を上げている社員は何をやっているのでしょうか。そして、そのことをやるためにどのような知識・技術が必要なのでしょうか。また、どのような考え方が必要なのでしょうか。

これを成長要素としてまとめあげると、優秀になるために必要なプロセスが分かります。

成長シートは自分が優秀になるための教科書だと分かれば、社員はこの成長シートに書いてあることを学びます。つまり、最初は優秀な社員の「マネ」をすることからスタートするでしょう。

成長シートの重要業務をやることで実際に成果が上がれば、今まで自分がやっていた成果が上がらない業務はやめるでしょう。何も自分のやり方に固執する必要性はありません。これが素直な社員の成長が早い理由です。

つまり、この成長シートに書いてあることを素直に学ぼうとする社員は誰よりも早く成長していくことになります。そのためにこの成長シート「あなたが優秀になるためのマネシート」という言い方をしてもいいでしょう(笑)。

ゆっくり成長したい社員もいるでしょう。早く成長したい社員もいるでしょう。ですが、成長のゴールは明らかに1つです。

そのゴールに向かって社員が成長シートに書いてあることを学ぶことは、そのままマネすることであり、それが成長のために最も生産性が高いことを上司は教えなければなりません。

成長シートの活用の仕方によって部下の成長は大きく左右されるでしょう。


サトー産業株式会社様(工作機械・管工機械、設備機器の販売、機械部品・資材の販売など 愛媛県)

2021-06-16 [記事URL]

「成長シートにより、スキルやノウハウを共有し業務の効率を図ったおかげで、7,000円を超える人時生産性を実現することができました」サトー産業株式会社 代表取締役社長 佐藤 慎輔氏(写真)

従業員に昇給や賞与の評価を説明できる仕組みを構築するため、成長塾で人事制度づくりを学ばれたサトー産業株式会社 代表取締役社長 佐藤 慎輔氏に、その経緯と効果について詳しく伺いました。

●会社プロフィール
社名 サトー産業株式会社
所在地 〒799-0404 愛媛県四国中央市三島宮川1丁目10番19号
資本金 1,000万円
設立 1971年4月
従業員数 27名
事業内容 工作機械・管工機械、設備機器の販売、機械部品・資材の販売など
URL  http://www.sato-sangyo.com/

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1.機械および機械部品の卸し会社

― サトー産業の会社概要をお聞かせください。

当社は愛媛県四国中央市に拠点を置く機械および機械部品の卸し会社です。扱っているのはプラント資材・菅工機械、伝導機器・軸受関連製品、油圧・空圧機器、物流・省力機器、工作機械・機械工具、住宅設備機器・環境機器、各種鋼材・建設資材など。

取引先の中心は四国に数多くある紙の生産工場です。トイレットペーパーやティッシュペーパー、印刷用紙、新聞用紙、段ボール原紙といった紙に関する製品を生産している工場に機械および機械部品を納品しています。

とくに需要が多いのは機械部品です。毎日機械を動かしていますから、日々のメンテナンス・保守は必須。そこで、当社の従業員が定期的に足を運び、必要な機械部品の受注活動を行っています。約500社ある取引先のほとんどは四国中央市内。一部、隣の市や県境を越える取引先もあります。

また、取引先向けに業務効率化・生産性向上、コスト削減、作業環境改善などに貢献する、自動化やIoT技術などを駆使した新技術・新商品の展示会を当社のショールーム「テクノメッセ」で実施。年2回の展示会では毎回50社以上のメーカーと当社の取引先が一堂に会し、大きな賑わいを見せています。

新技術・新商品の展示会場となっているショールーム「テクノメッセ」(写真)
新技術・新商品の展示会場となっているショールーム「テクノメッセ」

2.給与が上がる仕組みを従業員に説明できるようにしたい

― 成長塾を受講した背景をお聞かせください。

従業員を評価する仕組みがなかったことが背景にあります。そもそも事業承継のため、父が創業したサトー産業に私が入社したのは1997年、実際に事業承継したのは2008年になります。入社後の十数年は経営の勉強をしつつ、コミュニケーションを図りながら従業員との信頼関係を築くことに腐心してきましたが、昇給や賞与を決定する従業員の評価については、まったく勉強ができていませんでした。

その理由は、私が代表取締役となる前の評価基準は、先代社長の裁量で決められていたからです。給与や賞与の金額だけを提示し、金額の根拠はあやふやに答えていた状況でした。自身で創業したわけですし、そういう決め方もワンマンならではかもしれませんが、事業承継する私にすれば「同じようにやるのは無理」だと思いました。

私としては会社の業績と連動させ、どうすれば給与が上がるのか従業員に説明できるようにしたいという想いがありました。そのためには、やはり従業員の働き方を評価する人事制度が必要だと感じていました。

さらに人事制度導入の後押しとなったのがリーマンショックです。私が代表取締役になったのはリーマンショック直後で、このとき賞与を支給する現預金がありませんでした。金融機関から借入を行って何とか乗り切りましたが、来期も同様の状況であれば会社の存亡にも関わってきます。従業員一丸となって頑張るのはもちろん、人事制度を導入して根本的なところから変えていく必要があると切実に感じ、成長塾の受講に至った次第です。

― 成長塾を受講したきっかけをお聞かせください。

中小企業家同友会に入会していたので、馴染みの中小企業社長数人に良い手立てはないか聞いてみたのですが、具体的な人事制度を導入している会社はありませんでした。

そんなとき、中小企業家同友会の機関紙「中小企業家しんぶん」で松本先生の広告を拝見しました。これは当社に合うかもしれないと直感的に思い、すぐにDVDを購入して自分なりに仕組みをつくろうとしました。しかし、見よう見まねではつくれないと悟り、東京に行って成長塾を受講する決意を固めました。そして、2008年11月に69期生として人事制度を勉強させていただきました。

⇒成長塾についてはこちら

3.人事制度の効果が見えたのは導入4年目から

― 人事制度の導入に対して従業員の反応はいかがでしたか。

資材を確認する当社の営業担当(写真)受講後、従業員一人ひとりに人事制度を導入することを伝えました。このとき、賛否は半々。「たくさん給与をもらえるチャンス」と捉える従業員もいれば「給与を下げられるのではないか」と捉える従業員もいました。これについては、従業員がこれまでの働き方を自己評価した結果による意見かもしれません。とはいえ、導入は決定事項です。1年目は評価だけの慣らし運転、2年目から本格的な運用を行いました。

― 人事制度の導入で会社に変化はありましたか。

人事制度が意図した通りに動き始めたのは4年目以降で、1年目の慣らし運転後の2~3年は試行錯誤の繰り返しでした。反省しているのは、成長シートの数値目標が厳しすぎたことです。例えば、5段階の5点の数値は、絶対に達成できないような目標にしていたと後から気づきました。高い点数を獲得できる人が少なく、3点以下の点数に集中していました。

そこで、目標を下げるなどしながら、優秀な従業員は5点を獲得できる目標に修正。絶対評価だけでなく、全体で見る相対評価の要素を加えていきました。

4.人事制度導入の定量的成果

― 人事制度の導入後、どのような定量的効果を得ることができましたか。

2009年4月~2010年3月をBefore、2019年4月~2020年3月をAfterとした、成長塾受講による人事制度導入の定量的成果を以下に示しました。受講後はすぐに会社の経営状況をオープンにして、営業利益の1/3が半期ごとの賞与原資になることを宣言しました。その効果と景気の回復が相まって、おかげさまで前期と同じような賞与を出すことができました。なお、賞与原資は粗利益の方が分かりやすいと考え、その後は粗利益の8%に変更しました。

定量的成果
(クリックで拡大します)

5.売り上げは倍以上、人時生産性7,000円を達成

― 売り上げが倍以上になっていますね。

従業員が増えているのもありますが、やはり従業員の頑張りが売り上げアップに貢献しています。一方でAfterの粗利益率が下がっていますが、これは決してAfterの数字が悪いわけではありません。Before当時は、リーマンショックの影響で取引先の設備投資がほとんどなかったのが大きな要因です。よく売れていたのは保守用の安価な機械部品で、人手がかからないため、高い利益率となっていました。

つまり、売り上げは少ないものの、利益率の高いものばかり売れていたということになります。現在は高価な機械も売れており、このバランスに満足しています。

― 人時生産性が7,000円ですからこれは相当高いですね。

ここ数年は、従業員に人時生産性の話ばかりしています。「給与が上がる」「休みが多い」方が私も従業員も幸せだと思っていますから、「やるべき時間の中で効率的に仕事をしましょう」を徹底しています。おかげさまで3年前から完全週休2日制、水曜日はノー残業デー、さらに残業時間は月20時間までと大きく削減することができました。

6.ITを積極的に導入して業務の効率化を図る

― 人時生産性が向上した秘訣をお聞かせください。

人時生産性を上げるため、業務時間を削減しても売り上げを落とさない方法について、常に従業員と一緒に考えています。大きな施策としては、ITを積極的に利活用するようになったことが挙げられると思います。

納品書、請求書、見積書など、以前は手書きが多かったのですが、現在はこれらをすべてPCで作成。手間や時間を大きく削減することができました。また、従業員一人ひとりにはタブレットを持たせ、取引先の商談から社内コミュニケーションまで、あらゆるシーンで利活用。定量的な数値は算出していませんが、間違いなく業務の効率化が図られていると感じています。

また、人事制度に関連した部分では、人時生産性の向上に寄与したもっとも大きな要因は情報共有だと考えています。

7.情報共有が浸透したことで人時生産性が向上

― 情報共有についてもう少し詳しくお聞かせください。

「業績が向上すれば給与も上がる仕組み」を従業員が理解してから、情報共有する意識が高まりました。つまり「成長シートの成長点数が上がれば給与が上がる」「成長等級が上がれば給与はもっと上がる」「会社全体の利益が上がれば給与はもっともっと上がる」という仕組みを従業員が理解したということ。

一人が必死に頑張ったところで限界はありますから、だったら従業員みんなで頑張って会社全体の売り上げ向上を目指していく方が給与として還元される率が高いと理解したわけです。そういう流れで、業績を上げている従業員のスキルやノウハウは情報共有した方が得策という思考が従業員に広がっていきました。

― 具体的にどういった方法で情報共有を行っているのでしょうか。

営業事務の従業員が働く活気溢れるオフィス(写真)部門会議が情報共有の場になっています。もともと全体の進捗と問題点を発表する全体会議は月1回開催していたのですが、以前は先代社長のトップダウンが強く、あまり会議として機能していませんでした。

そこで、人事制度を導入してからは3つの主要部門、営業、営業事務、物流ごとに週1回の部門会議を習慣付けるようにしました。

部門会議を続けるなかで効率的な業務の仕方を話し合うようになり、より良い方法をマニュアル化する施策も生まれました。情報共有とともにベクトルも同じ方向を向きますから、会社にとっても部門会議は大きな役割を果たしていると言えます。

8.キャリアのなかで身に付けたスキルやノウハウを共有

― 情報共有が生かされていると感じる場面はありますか。

当社の従業員の多くは営業です。営業といってもエンジニアも兼務する営業 兼 エンジニアのマルチプレーヤー。取引先では注文を伺ってくるだけでなく、担当者の相談を聞きながら、ちょっとした診断力や簡単なメンテナンスのスキルも必要になってきます。つまり、キャリアのなかで身に付けたスキルやノウハウが問われるわけですが、人事制度導入以前は、そのスキルやノウハウは従業員の中から外に出ることはありませんでした。

人事制度導入後は従業員みんなで売り上げを考えるようになりましたから、部門会議を通じてスキルやノウハウを共有。新人も短期間でスキルやノウハウを身に付けることができるようになったため、売り上げという目に見える形で効果が表れています。

― 佐藤社長から見た定性的効果をお聞かせください。

年2回開催している大盛況の展示会の様子(写真)情報共有をベースに自主的に教える風土も根付きました。もちろん、成長シートでは「教える」に最高評価の5点を与えていますから、5点を目指して頑張る部分はあると思います。ただ「教える」には、自分自身のスキルやノウハウも常にリプレースしていかなければなりません。そういう意味では、自分自身の知識やスキルをもっと向上させたいと考える向上意欲が旺盛な従業員が増えてきたと感じます。

また、成長シートの勤務態度に「主体性」を入れていることもあり、多くの従業員は主体性を持って業務に取り組んでいるように思います。大まかな指示や方針を伝えれば、あとは自分なりに考えて行動している場面をよく見かけます。

私自身は従業員を褒めることが多くなりました。そうなると社内の雰囲気が良くなりますね。楽しく仕事ができると業績も伸びるのではないでしょうか。

9.大事なのは上司の顔色ではなく、成長シートに目を向けさせること

― 人事制度に悩んでいる企業に向けて、御社からアドバイスがあればお願いします。

我々のような中小企業は人材を集めるのも大変です。ですから、大事な従業員はしっかり育てていくことを考える必要があると思います。しかも、中小企業は「どうやって給与が決まるか、どうやって昇給するのか」そういった仕組みはおざなりになりがち。人事や給与システムの仕組みが分からないと、従業員は上司の顔色ばかり伺って仕事をしなければなりません。

給与の仕組みを明らかにするだけで全然違います。人事制度を導入した当社だからこそ、その効果を実感しています。当社の従業員は私の顔は見ていません。見ているのは成長シートです。これが会社の業績を向上させる要因です。

― 最後に一言お願いします。

当社の人事制度は中小企業家同友会のなかでも注目が高まり、四国中央支部4月例会では「社員が納得する目標設定へ~成長を促す人事制度づくり~」というテーマで登壇させていただきました。ここまでこられたのは松本先生のおかげだと思っています。ちなみに登壇時にも申し上げましたが、見よう見まねで人事制度はつくれません。しっかり成長塾を受講することをおすすめします。

佐藤社長

サトー産業株式会社様、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。


サトー産業株式会社様のホームページ
※ 取材 2021年3月


第69話 マネジメント研修を100%活かす方法

2021-06-15 [記事URL]

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長い間経営をしていると、社員を成長させるためには何か特別なマネジメントスキルが必要だと考えるようになります。それは社員一人一人の成長の度合いが違い、同じように成長させることができていない現状があるからです。それが分かると、部下を持つ上司はますます指導することが重荷になっていきます。

そのため、この問題を解決する方法を探します。それがマネジメント研修や管理者研修です。この研修に上司を参加させる経営者の思いは藁にもすがる気持ちでしょう。なんとかその研修で上司にマネジメントの力をつけてもらい、そして部下をどんどん成長させてほしいという期待が込められています。

しかし、その研修を受けてコツを掴んだと思って笑顔で話をしていた上司も、1か月も経たないうちに、研修から帰ってきた時とは全く違う悲しい表情をするようになります。それは学んできたことを発揮しても、その通りに部下が成長しないことに驚き、そして悩むからです。

残念なことに10人いたら10人の社員に対して、同じスキルを活用し部下指導しても有効になることはまずないと考えた方がいいでしょう。このことをまず知ってもらう必要があると思います。そして、学んだことを実際に発揮した時に、部下から想定したことと違う反応が返って来れば、その部下指導に対して部下がどう行動するか、部下が教えてくれたことになるでしょう。上司は、実践の中で部下指導の仕方を学んでいきます。これを繰り返しながら、本当の上司としてのマネジメントの力がついていくことになります。

「部下指導」は部下を成長させる重要業務であり、そしてその重要業務を遂行するためのマネジメントスキルが必要になります。しかし、これを身につけるよりも前にもっと大切なことがあります。それは、上司は「何を」部下に指導するかです。これが分からなければどのようなマネジメントスキルを身につけても有効にはなりません。それが分かるのが部下の成長シートなのです。

部下の成長のゴールが示されている、成長シートの中にはマネジメントをするための対象が記載されています。それが「重要業務」であり、「知識・技術」であり、「勤務態度」です。この成長要素が、上司が部下を指導するための対象なのです。部下が知識・技術が身につき、重要業務ができるようになってきたら、部下指導が有効になったことが分かるでしょう。勤務態度が守れるようになってきたら、それは部下指導の力がついたことがわかるようになるでしょう。

つまり、この何を指導するかを明確にしなければ、残念なことに部下指導の力がついたかどうかの判断ができません。部下指導は100%すぐにはできないでしょう。最初に部下を持ってから部下が成長するまでの力をつけるためには10年以上はかかると考えた方が妥当です。

マネジメント研修に上司を参加させる前に、成長シートをつくってください。


第68話 生産性向上のためには仕事を増やさない

2021-06-08 [記事URL]

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今の日本では、生産性を向上させることがとても重要です。例えば「人時生産性」という生産性指標がありますが、環境の変化によって成果が低い時には低い分だけ、投入する労働時間を減らさなければなりません。このコントロールができない会社が新型コロナで一気に生産性を下げています。

春の来ない冬はありません。この新型コロナがいつか終息する時が来ます。今、成果が下がっているときに労働時間をコントロールしないで生産性を下げてしまうと、元の成果の大きさに戻った時、つまり成果が新型コロナ前の状態に戻った時に「人手不足」になり、社員の採用を現場から求められるようになります。

この問題を解決するためには、成果が低い時には必ず、それに合わせて投入する人時をコントロールしなければならないのです。そして、その余った労働時間で今までできなかったことをやるべきでしょう。

内部体制固めに取り組むのも良いでしょう。

マニュアルをつくるのも良いでしょう。

教育訓練を充実させるのも良いでしょう。

未経験の仕事にチャレンジする、つまり、多能工化に取り組むということもあり得るでしょう。

この考え方が、この未曾有の経営環境の変化に合わせて経営者が取り組まなければならない大事なことなのです。

全ての社員の生産性を高めるためには、成長シートのやるべきこと、つまり、重要業務を特定することがとても重要です。その成果を上げるためのやり方を徹底してやることです。この考え方が必要な時代です。

いろいろなことをたくさんやるのではありません。やっても成果の上がらないことを1日も早くやめ、その時間で新しいことに取り組むのです。

特に経営計画書をお持ちの会社はこのことが問われています。経営計画書で期初に何をするかを決めたでしょう。この決めたものは、ほとんど経営者・経営幹部が取り組むことだと思います。

ところがこの厳しい環境の中で、経営者・経営幹部がいろいろなことに取り組んでいますが、うまく成果を上げることができない、つまり、「因果関係のない重要業務と分かっていながらその業務を継続し、さらに新しいことに取り組む」という問題の行動を取っている会社が多いようです。やることの「追加」です。これは明らかに生産性を下げています。

経営者・経営幹部が余計なことをする時間は全くないと考えなければなりません。経営計画書で掲げた業務を、3か月間取り組んでも経営目標の達成に繋がることがないと分かれば、すぐに止めなければなりません。幹部と合宿などでじっくりと計画を考えたとしても、今の環境には役に立たないことをマーケットが教えてくれたら、止めることです。次の3か月は、今この3か月間でマーケットが教えてくれたことを踏まえて、新しい業務に取り組むことです。

このこと自体が実は経営者・経営幹部の生産性を左右しており、かつ組織全体の生産性に影響するでしょう。今までのように頑張って長い時間働くという考え方を持っている会社は、この時代を生き抜くことはできません。成果を上げるやり方に注力していけるかどうか。そして実際にやってみても成果が上がらなければ、止めると判断できるかどうか。それが問われている時代です。

中小企業であれば、経営者も管理職の成長シートを活用することになりますが、その成長シートに書いてあることをやりながら、成果を上げるやり方を明確にしていきます。それ以外のことは優先順位が低いことがわかっていますので、常に見直しをしてください。


「日経電子版」に代表の松本の記事が掲載されています!

2021-06-03 [記事URL]

最新の人事問題の解決方法を中小企業の経営者のために解説しました。ご一読ください。

日経電子版 スキルアップ塾
https://www.nikkei.com/theme/?dw=17090314

高齢社員の賃金肥大化、ジョブ型雇用で解消するか
松本順市「1300社が導入した日本型ジョブディスクリプション」(1)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1059Z0Q1A510C2000000/

テレワーク社員の何をどう評価するか 揺らぐ人事制度
松本順市「1300社が導入した日本型ジョブディスクリプション」(2)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC13AWO0T10C21A5000000/

同一労働同一賃金の大前提 「教える」への高い評価
松本順市「1300社が導入した日本型ジョブディスクリプション」(3)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC13BA80T10C21A5000000/

安易なジョブ型雇用は本末転倒 「多能工化」を阻む恐れ
松本順市「1300社が導入した日本型ジョブディスクリプション」(4)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC274200X20C21A5000000/


「日経トップリーダー」2021年6月号に代表の松本の記事が掲載されました!

2021-06-02 [記事URL]

「日経トップリーダー」2021年6月号に代表の松本の記事が掲載されました。
ぜひご覧ください。

上記トップリーダーの記事を基に構成されたweb版は、こちらからご覧いただけます。

日経ビジネス電子版
特集 人事制度の悩みに答えます
「給料の高い会社に転職する」と言ってきた社員を引き留めたい。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19nv/120500136/052600464/

驚きのランキング2位になりました(6/1時点)


第67話 経験者の採用に失敗しない方法

2021-06-01 [記事URL]

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社員を採用する場合、経験のある人の採用と、全く経験のない人の採用(たとえば新卒社員)と、どちらにしますかと質問したら、多くの経営者は当然「経験のある人」と答えるでしょう。

それは、経験者であれば一から教えなくても良いと考えるからです。そして入社と同時に即戦力として高い成果を上げてもらえる可能性があることを理由に挙げるでしょう。ところが、経験者を採用した会社の多くが気がついていない理由で失敗しています。その本当の理由を理解している経営者はあまりいません。

日本では、現場の優秀な社員を中堅職に昇格します。その優秀な社員は自社の優れたやり方で成果を上げています。実は、この自社の中で高い成果を上げるプロセスと、採用した経験者が前勤務先で行っていたプロセスは異なります。これを理解していないため、経験者の採用で失敗するのです。

自社の成長シートの重要業務の種類、知識・技術の種類、勤務態度の種類。これは100社あれば100社違います。つまり、前勤務先が同業種で、もし成長シートがあるとすれば、その会社の成長シートで優秀だと評価されたのであり、自社で優秀であるかどうかは保証されていません。

今まで1,306社の成長シートをつくってきましたが、業種が同じでも規模が同じでも、同じ成長シートであったためしは一回もありません。つまり、他社で優秀だとされるやり方は、自社でも優秀なやり方である可能性はほとんどありません。ポイントはここです。

もし、中途採用した社員が、前勤務先で優秀だったやり方を自社で発揮したらどうなるでしょうか。自社の「A」という今までの優れたやり方と、中途採用した社員の「B」という前勤務先のやり方、この2つのやり方が自社に存在することになります。これが組織を混乱させる原因です。

常に自社の優れたやり方は一つに統一しなければなりません。これが統一されなければ、マネジメントを担う上司の教えるやり方は「A」なのか「B」なのか判断できません。どちらを教えたら良いかを自分で決めなければなりません。この状態では部下の異動もできなくなります。

そして、部下指導の経験者を採用する時に絶対にやらなければならないことがあります。それはどんなに前勤務先で優秀だとしても、まずは自社の一般職の成長シートで優秀であることを証明することです。そして、その成長シートで高い成長点数を取って、一般職を卒業し中堅職にステップアップした時に部下を初めて指導できます。この仕組みがなければ、経験者を中途採用する度に上司は混乱することになるのです。

自社の統一的な部下指導をするためには、常に成長シートは1種類というスタンスを取ることが絶対条件になります。

また、成長シートがある会社は分かると思いますが、優秀かどうか考える時に、勤務態度について必ず尋ねることになります。これも意外と重要です。高い成果を上げることだけで評価するのではなく、自社の勤務態度を守ることも評価の対象であると、採用面接の時にしっかりと説明しなければなりません。

高い成果を上げることができるが、自社の組織文化が合わないために途中で辞めてしまった話はしばしば聞きます。そういう問題が起きないために、これも成長シートでしっかりと確認することが必要でしょう。

優秀だというのは他社ではなく自社で優秀であること。それは他の会社の優秀さとは違うことをしっかりと理解しなければならないのです。

自社の優秀な社員を成長シートで可視化してから、中途採用をしてください。この成長シートを活用すれば、自社でいつも優れたやり方の統一ができます。


株式会社丸忠様(リースキン事業、代理店事業、ハウスケア事業、トータルコーティング事業 沖縄県)

2021-05-26 [記事URL]

成長塾の人事制度をベースにした人材育成を実施して債務超過を脱却。おかげさまで沖縄人材育成企業にも認定されました

新たな人材を採用し育てて経営基盤から会社を再構築するため、成長塾で人事制度づくりを学ばれた株式会社丸忠 代表取締役 喜納 朝勝氏に、その経緯と効果について詳しく伺いました。

●会社プロフィール
社名 株式会社丸忠
所在地 〒901-2131 沖縄県浦添市牧港5丁目19-8
資本金 4,800万円
設立 1977年3月
従業員数 44名およびパート・アルバイト6名
事業内容
リースキン事業:家庭用、業務用ダストコントロール商品のレンタル
代理店事業:ダストコントロール商品の代理店さんへのリース
ハウスケア事業:法人・個人のハウスクリーニング全般、殺菌抗菌システム
トータルコーティング事業:新築の住宅のフロアコーティング“ミラーコート”、
水廻りのコーティング“クリスタルコート”、窓ガラスの断熱フィルムの施工など
URL  https://kireimaru.jimdo.com/

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1.沖縄全域に“キレイ”を届ける会社

― 丸忠の会社概要をお聞かせください。

当社は「沖縄をキレイにしたい」という想いを胸に1977年、軍関係の衣類クリーニングからスタートしました。現在のコア事業のひとつはオフィスや店舗、家庭のダスト・ホコリをコントロールし、清潔で快適な環境を提供するリースキン事業です。リースキンは全国に1,400拠点、全国ネットで“キレイ”を届けており、当社は地方本部として宮古・石垣・与論・沖永良部などの離島を含む沖縄全域に“キレイ”を届けています。

もうひとつのコア事業はハウスケア事業です。ハウスクリーニング、事務所クリーニング、トータルコーティング、カーペットのスチームクリーニングなど、オフィスや家庭を問わず、キレイに関するハウスケア事業を幅広く手掛けています。取引先は県内一流ホテルからレストラン、カフェ、店舗、オフィス、一般家庭などさまざま。定期的な訪問を通じ、その場を利用される方々により良い環境を提供しています。

近年はコロナ禍に疲弊する方々のお役に立てることはないかと思案し、新型コロナウイルス対策商品・サービスを扱い始めました。なかでも当社が沖縄の総代理店を務めている「Halo fogger(ハロフォガー)」は、医療機関において大きな反響を得ています。Halo foggerは機械による環境表面殺菌で室内空間を短時間で丸ごと殺菌する製品で、ヒューマンエラーを防ぐとともにウイルスや芽胞菌、薬剤耐性菌を99.9999%殺滅することができます。また、10μm以下の極小粒子(ドライミスト状)にして噴霧するため、医療機器への影響がありません。これにより、多くの医療機関で導入いただいております。

当社はこれからも沖縄のキレイを追求し続け、幸せな社会づくりへの貢献を目指し精進してまいります。

機械による環境表面殺菌で室内空間を短時間で丸ごと殺菌する「Halo fogger(ハロフォガー)」
機械による環境表面殺菌で室内空間を短時間で丸ごと殺菌する
「Halo fogger(ハロフォガー)」

2.債務超過から脱却するための手段が人材育成

― 成長塾を受講したきっかけをお聞かせください。

債務超過の会社を立て直すには、人材育成と考えたのがきっかけです。そもそも丸忠で働くようになったのは、創業者の義父から事業承継の話を受けて帰沖したのが始まり。入社当初は会社全体を把握するため、営業の先頭に立って奮闘していました。ところがある日、会社の債務超過が発覚。義父とは話し合いを重ねましたが、結局は債務超過のまま事業承継することになり、2001年に丸忠の代表取締役に就任しました。

丸忠に入社して感じていたのは、キャリアの長い従業員の方が多く、会社を担っていく若手が育っていないこと。まじめで勤勉な従業員の方々でしたが、キャリアが長くなってくると現状維持で満足してしまい、実際に言動を見ていてもイエスマンになっていると感じていました。こうしたリソースの活力が不足している状況では、債務超過の経営状態を抜け出すのは困難です。かといって、経営を立て直すだけの資金はありませんでした。

代表取締役に就任して「何かできることはないか」とさんざん考えた結果、たどり着いたのが人材育成でした。実は事業承継後を見据え、代表取締役就任前から「沖縄県中小企業家同友会」に入会し、経営全般を少しずつ勉強していました。重要だと感じたのは会社の理念でしたが、理念を根付かせるには「採用と教育が鍵になる」と沖縄県中小企業家同友会所属の尊敬する経営者の方々から教わりました。私としても、本気で丸忠を立て直すには新たな人材を採用し育てて経営基盤から再構築するしかないと考えました。人材育成なら大きな投資をしなくても取り組むことができます。

― どのようにして人材育成を行うつもりだったのでしょうか。

リクルートを行えば人材を集めることはできますが、大事なのはその人材を育てる環境です。当初は人材育成に携わるプロのコンサルタントも考えましたが、前述したように潤沢な資金はありません。そもそも中小企業ですから、コンサルタントが策定するような大袈裟なものは合わないと思っていました。漠然と求めていたのは、従業員の働きを評価し成長を支援する中小企業に合った仕組みでした。

3.人事制度作成マニュアルを経て対面の成長塾を受講

― 成長塾を受講したきっかけをお聞かせください。

沖縄県中小企業家同友会の会報誌に掲載されていた、松本先生の人事制度作成マニュアルの広告を拝見し「これだ!」と思ってすぐに飛びつきました。最初は人事制度作成マニュアルを購入して、自分の手で人事制度をつくってみようとチャレンジしました。

ところが、私の理解不足もあり、人事制度作成マニュアルだけでは人事制度を完成させることができませんでした。これはまずい思い、どうにかして松本先生の人事制度を導入し運用できないか思案していました。そんなとき、松本先生から成長塾の開催案内を受けました。直接対面で教えてもらえば人事制度を運用できるかもしれないと考え、2005年に福岡で開催された成長塾に申し込み、受講させていただきました。

⇒成長塾についてはこちら

4.成長シートをもとにした面談を実施

― 人事制度はすぐに導入されたのでしょうか。

成長塾の受講後、およそ1年かけて成長シートを完成させ、人事制度をスタートさせました。といっても、成長塾が教える人事制度のすべてを始めたわけではありません。私も受講したばかりですから手探りの状態。まずはできるところからと考え、本人の自己評価と上司の評価を面談ですり合わせを行う仕組みの運用から始めました。

もちろん、成長シートをもとに評価を行うわけですが、やはり本人の評価と上司の評価は異なります。しかし、客観的に数値化された成長シートを見ながらお互いの意見を交換し合えるので、より良い仕事の仕方を一緒に模索することができます。それだけでなく、日頃の仕事のなかで困っていることやプライベートな部分までケアするなど、面談をコミュニケーションの場として機能させることができました。

松本先生は「慣れるまでは年に4回、慣れてきたら年2回」とおっしゃっていましたが、面談は従業員のモチベーションアップにつながっていると感じており、今でも年4回実施しています。私としては、この仕組みを運用することができただけでも非常に満足しています。

5.運用を始めて4~5年後から従業員の理解度が高まる

― 人事制度の導入で会社に変化はありましたか。

賃金制度などの導入を加えながら、この評価の仕組みを10年以上運用していますが、4~5年経ったころから変わり始めました。この頃には、賞与原資は全社粗利益で決定することをアナウンスしていましたから、いくら自分の部門が良くても他の部門が悪ければ原資が出ないことを従業員は理解したのだと思います。

従業員の理解度が高まったことを受け、会社としてもリースキン事業やハウスケア事業を部門ごとに縦割りにするのではなく、例えばリースキン担当の従業員でもハウスケアの営業ができるなど、部門を横断した活動を支援。中堅クラスの成長シートの重要業務には「全社を巻き込んで目標達成に向かわせている」を記載し、マルチプレーヤー重視の姿勢を明確にしました。

当社のような40名程度の会社では、なかなか一人一役というわけにはいきません。複数のポジションをこなしたほうが生産性向上につながりますから、それを成長シートに盛り込んだわけです。その意図を従業員は理解し、みんなで助け合いながら利益を上げていく仕事のスタイルへと徐々に変わっていきました。私としても、課題に掲げていた人材育成が正しいベクトルに向かっていると感じた時期でもありました。

6.債務超過からの脱却に成功

― 人事制度の導入後、どのような効果を得ることができましたか。

2008年7月~2009年6月をBefore、2019年7月~2020年6月をAfterとした、成長塾受講による人事制度導入の定量的成果を以下に示しました。前述したような運用により、導入当時のBeforeと10年続けたAfterを比較すると大きな効果が出ているのが分かると思います。もちろん、債務超過の経営状態からも脱却することができました。
丸忠様の定量的成果

7.体系的な人事制度を確立できつつある

― 成長シートは年々ブラッシュアップしていくという話をよく伺いますが、御社はいかがですか。

月日が経てば業務は変化し、考え方も変わってきますので、成長シートは部門長と相談しながら毎年ブラッシュアップしています。新人従業員に対しては、一般の従業員と同じ成長シートではハードルが高いため、新人従業員専用の成長シートを用意しています。さらに、新人従業員には人事制度の説明会を開催し、「成長シートの成長点数を伸ばすことが成長につながり、そして処遇も変わっていく」ことを説明。徐々にですが、体系的な人事制度を確立できつつあると感じています。

― 体系的な人材育成について詳しくお聞かせください。

松本先生もおっしゃっていましたが、この仕組みは会社に経営指針があることが大前提となります。つまり、会社の理念を基本として方向性、価値観、目標が明確になっていることを踏まえて人事制度を運用するわけです。ですから、当社もベースとなる経営指針書を作成しました。そして、この経営指針書を受け、どんな仕事をするのかを具体的に示したのが、個々の従業員に紐づく成長シートになります。こうした関係性をはっきりさせたからこそ、体系的な人事制度が確立できつつあると自負しています。

経営指針書には会社全体の経営的な数字もオープンになっており、利益目標を掲げた予算書も入っています。もちろん、その利益のうちの何パーセントが賞与になることも記載しています。実はこの経営指針書は、私一人で作成しているわけではありません。決算前の毎年5月、研修時に従業員全員が集って経営指針書をまとめています。

毎週、近隣の小学校のトイレ掃除をボランティアで行っています今期も従業員全員が集って経営指針書をまとめましたが、当初、私は「今年はコロナ禍を考慮し、売上目標は前年より下方設定した方の良いのでは」と提案。ところが従業員からは「前年と一緒で大丈夫」と驚きの返答がありました。実際、今期は新型コロナウイルスの影響もあってコア事業のリースキンは芳しくありませんが、その分を新型コロナウイルス対策商品・サービスがカバーし、ほぼ目標通りの売り上げを達成できています。このままいけば、今期は過去最高の売上高と利益が出る試算となります。

従業員の成長は嬉しい限りですが「こういうときこそ一致団結して頑張ろう」という機運は、決して私から発したわけではありません。「自分たちで決めて実行する、自分たちで検証する」という仕事への取り組み姿勢が、人事制度によって根付いたおかげだと思っています。

8.コミュニケーションの高め方を模索

― 一致団結できるということは社内でのコミュニケーションも活発なのでしょうか。

経営指針書や成長シートを通した価値観の共有が一致団結させているのだと思います。コミュニケーションという点では前述した面談のほか、朝礼や毎朝のリーダーミーティングなども重要なコミュニケーションの場だと思っています。

第三者が見れば、コミュニケーションが活発な会社だと思うかもしれませんが、我々はまだまだ足りないと感じています。一人ひとり置かれている状況や立場は違いますし、環境も目まぐるしく変わっていきますから、上手くいっている関係でも2週間後にはちょっとしたズレやすれ違いが起こる可能性は多々あります。コロナ禍ですから居酒屋で「飲みにケーション」できないのが残念です。とりあえず幹部に関しては私の自宅に定期的に集まってもらい、飲食しながら他愛もない話をしてコミュニケーションを高めています。もちろん、新型コロナウイルス対策は十分に行っています。

社員の家族も招待しての望年会は大盛り上がりです
社員の家族も招待しての望年会は毎年大盛り上がりです

9.再受講で会社の成長にリンクする人材育成を認識

― 2015年にもう一度受講されていますが、その理由をお聞かせください。

幹部にも人事制度の全体像を理解してほしいと思い、私と幹部4名で成長塾を受講しました。私も一緒に受講したのは、もう一度勉強し直すことで新しい面が見えてくるかもしれないと考えたからです。

再受講して感じたのは、方向性に間違いがなかったことを確認できた点です。とりあえず、一安心しました。また、全体を通じて制度が洗練されてきたと感じました。私が2005年に受講した当時は、成長シートの成長要素がかなり細かったのですが、再受講したときはシンプルでかつ分かりやすくなっていました。実際に運用されている企業のフィードバックを得ながら「改良し続けてきた結果が反映されている」と感じました。

受講した幹部もより深く理解したはずですから、このまま成長塾の人事制度を運用していけば「会社の成長にリンクする人材育成ができる」と思っているでしょう。今度は、新たに誕生する部長にも成長塾を受講させる予定です。

10.まずは成長シートをつくることが大事

― 人事制度に悩んでいる企業に向けて、御社からアドバイスがあればお願いします。

「自社に合った成長シートを自社でつくる」ところがポイントです。経営者が諦めたら終わりですから、とにかく時間がかかっても成長シートをつくることが大事です。ちなみにですが、別のコンサルティング会社を入れて制度づくりを行っているところは、どの会社もあまり上手くいっていないようです。そういった話を聞くと、心の底から松本先生の人事制度を導入して良かったと思います。沖縄で成長塾の人事制度を導入している企業とは、「お互い切磋琢磨し頑張って行きましょう」と話をしています。

11.沖縄人材育成企業の認定を受ける

― 最後に一言お願いします。

当社は2018年に、沖縄県で50社ほどある沖縄人材育成企業に認定されました。沖縄県が主催する人材育成企業セミナーの受講や認証アンケートへの回答などを行い、基準点をクリアすると認定をいただけるのですが、これは当社の人事制度が評価された結果だと思っています。ここまでたどり着けたのは松本先生のおかげです。これからも、引き続きよろしくお願いします。

2021年度社内入社式にて

株式会社丸忠様、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。


株式会社丸忠様のホームページ
※ 取材 2021年3月


第66話 後継者問題を解決する確かな方法

2021-05-25 [記事URL]

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その他の著書に関しては、書籍のご案内を参照ください。

 

帝国データバンクの情報によると、日本の後継者の不在率は2020年に65%になりました。

一般的に後継者を決めるには、様々な状況を考えると後継者を指名しようとした時から通常5年かかると言われています。

しかし、残念ながら5年や10年で後継者が決まることはないでしょう。それは日本経営の大きな特徴があるからです。

その後継者問題に悩んでいる多くの経営者に「我が社の現場のことを知らずに後継者の指名をしますか?」とお尋ねすると、100%「それはありません」と答えます。つまり、我が社の現場を分かっていない社員を後継者に指名はしないのです。

それは、日本では一般職層で優秀になって中堅職層にステップアップし、中堅職層で部下を指導して優秀になって管理職層になるという順番があるからです。そして、管理職層になった社員は経営者と一緒に、この会社を通じて世の中に大きな貢献をする目標を立て、活躍することになるでしょう。

それはとても重責です。簡単に今までのようにできることではありません。優秀なプレイヤーであったとしても、優秀なマネージャーだったとしても経営者になれるかどうかは管理職層で大きな違いが出てきます。このための年数は入社後、最低でも20年かかるでしょう。ですから経営者になった瞬間から既に、後継者指名を考えておかなければならないことになります。

逆にこのことがはっきりわかっていれば、一般職層・中堅職層・管理職層の成長シートをつくって運用し、その管理職層の成長シートで高い成長点数の社員を、後継者に指名することになるでしょう。

このこと自体は自分の親族から指名するのか、従業員の中から指名するのか、様々な状況が考えられるでしょう。創業経営者がいなくなった後の後継者を考えるのであれば、決して親族から指名するという画一的な決め方ではいけません。事業承継するときに「管理職層の中で一番成長点数の高い社員を後継者に指名する」と、事前に社内に告知することがとても重要です。

なぜなら、後継者に指名した社員は成長点数が高いことを、そのときの上層部は全て知っています。成果が高い、やることをやっている、知識・技術を持っている、勤務態度も良い。つまり、総合点数が高いから後継者に指名されたことが組織的に証明されれば、誰も否定はできません。

この決め方が、その後継者が実際に経営者として力を発揮する時に最も組織全体に支持される環境づくりとして重要です。そのことを前もって決めて社内に告知することがとても重要だと考えています。

これからの日本での経営はとても舵取りが難しくなるでしょう。高度成長時代や安定成長時代であれば誰が経営者になっても…という言い方は変ですが、問題がなければ経営ができた時代はありました。しかし、これからはそうはいきません。新型コロナのような大きな環境変化に適応していかなければならない時代です。

後継者の指名は、この事業をその次の世代にも存続発展させるためにも経営者の最も大事な役割を担うための仕事です。そろそろ準備を始めてもらいたいと思います。


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